ビジネス

2019.05.17

「経験で社会人に負けない」。最年少上場を目指す「学生起業家」の戦い方

F Venturesの創業者兼CEOの両角将太(左)とTaimeeの小川嶺(右)


両角:私が小川さんと出会ったのは2018年の3月ごろ。小川さんがタイミーを考え始めた時期にF Venturesの元インターンを通じて知り合いました。1時間カフェで話しましたが、最初の50分は雑談のみ。最後の10分間で真面目にビジネスの話をしました。当時はプロダクトもなかったので、ほとんどその会話だけで出資を決断しましたね(笑)。

小川:あの時は本当に嬉しかったですね。あれは伝説です(笑)。

両角:私の会社の投資スタイルには大きく分けて二つあって、一つは産業に通じた社会人を対象に、テクノロジーを用いて産業をアップデートしてくれそうなベテラン起業家への投資。もう一つは、自分たちには見えないトレンドを掴みイノベーションを起こしてくれる若い起業家への投資です。

小川さんのような後者のケースに対しては「人」ベースで判断をしています。彼は過去の経験や前回の失敗を踏まえ、難しい問題に直面しても常にスピード感のある意思決定をしています。彼の悩む時間の少ないところが素晴らしいと思い、出資を決断しました。

小川:タイミーはなんといっても事業のポテンシャルが大きいのが魅力です。マーケットサイズも大きいですし、現場で得られる評価も魅力的です。タイミーで働くと、自分の評価がどんどん溜まっていく仕組みになっています。これは信用経済に使えるデータです。今、まさにその信用経済とフィンテックの部分の設計をしているところです。タイミーで稼いだお金は今のところ銀行でしか引き出せないのですが、いずれはそのまま使えるようにしたいと思っています。

タイミーの「経済圏」「信用」「店舗ネットワーク」「ユーザー」。このぐらいのデータが揃っていれば、この先も面白い事業ができると思います。だからこそ絶対成功させたいですね。最初からそこまで考えていたわけではないですけど。

両角:小川さんの強みは、考えながら動くことができるところだと思います。行動しつつ勉強もしているのでスピード感がある。ファイナンスに関しても「8カ月で3回」という速さで資金調達を達成したということで驚きです。私も2011年からこの業界に入り、過去にも様々なスタートアップを見てきましたが、ここまで速い人はなかなかいないと思います。

小川:資金調達に関しては、とにかくいろんなVCに会ってフィードバックを貰うことを通じて自分が成長することができた部分が大きいと思います。

当時、VCの方から「プロダクト案に関する数値を全部出して」と言われた時、それらの用語自体の意味は知ってはいたものの、そこまで細かく算出したことがなく計算方法も知らなかったのでどうやるか全然わからなかったんです。

でも逆にそれを契機に自分で数値を出してみて、VCの方からそれに対するフィードバックを頂いたことで、知識を持ったVCの方々と話しながら自分のプロダクト案を作っていけたところがありました。

専門家に聞いてもらった方が絶対早いですし、無料でコンサルをしてもらえるようなものなので、資金調達はどんどんVCの方々に会いに行った方が良いと思いますね。

両角:実はそのような感覚を持っている学生起業家は少ない。ほとんどが「勉強してから提案する」という姿勢です。その結果、ファイナンスの時点で頓挫する人が多くなっている。そんな中、小川さんは「勉強する前にぶち当たっていく」スタイル。これが強みだと思います。
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写真=帆足宗洋(Avgvst) 構成=山西みな美

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