ビジネス

2019.05.10

突入し、巻き込む。第二創業に取り組む玉塚元一がラグビーで培った信念

玉塚元一 デジタルハーツホールディングス 代表取締役社長 CEO

今年9月に日本で開催されるラグビーW杯。組織論、リーダー論として語られることの多いラグビーとビジネスの共通項とは?経営者へのインタビューとラグビーの母国である英国を訪ねてその本質を探った。

インタビューやレポートを全5回に渡ってお届けする。


玉塚元一は2017年6月、ハーツユナイテッドグループ(現・デジタルハーツホールディングス)の経営トップに就任した。

モバイルゲームのデバッグサービスを中心に成長を遂げてきた同社で、彼が掲げたのは「第二創業」。人工知能(AI)やIoTを多くの企業が取り入れていく状況を好機と捉え、エンタープライズ分野のシステムテストやサイバーセキュリティを新たな事業柱に育てる攻めの成長戦略を打ち出した。

過去には、ファーストリテイリングやローソンの経営トップも務めてきた玉塚。経営者として挑戦を続ける彼を常に支えてきたのは、ラグビーで培った「泥臭い信念」だ。

ラグビーで得た成功体験

慶應義塾普通部でラグビーを始めた彼は、慶應義塾大学3年生でレギュラーポジションを獲得。関東大学ラグビー対抗戦ではエリート集団である明治や早稲田に勝利。大学選手権でも準優勝した。

「慶應大学のラグビー部は受験のハードルがあるので、高校で実績を残した優秀な選手が必ずしも入れるわけではない。そのため、もう二度とやりたくない地獄のような練習を重ね、徹底的に鍛えて、大学対抗戦で優勝するというビジョンを掲げて努力した。そこで結果を残したという成功体験を得られたことは自分にとって得難い経験になっています」

ラグビーにおいてチームが前進することは、企業になぞらえるなら組織の成長だ。そして組織の中では多くのメンバーが意志をもって動いている。

「ラグビーでは敵陣へゲイン(ボールを前に進めること)するために高速でPDCAを回しながら攻略していくわけです。チームのメンバーそれぞれが各自のポジションにおいて最適解を出し、各自が判断しながら責任感をもって動く。これは組織としても非常に重要なことです」

有機的に組織が動くために、それぞれが役割を果たすことが重要なのは自明だ。では、経営者における責任感をもった動きとは?

その鍵は、玉塚がローソン、そしてデジタルハーツホールディングスのトップに就いたという挑戦を、繰り返し「突入」と表現したことにある。

「ファーストリテイリングのあと、リヴァンプという会社を作りました。日本ではまだ経営者の流動化がそんなに進んでいませんが、企業再生が必要な会社や、ブレイクスルーをしたい会社の支援、そしてインキュベーションにはプロの経営人材が必要です。そこでリヴァンプではチームを組んでその会社に入り、再生やインキュベーションに取り組むことにしました。ローソンも僕は、最初はリヴァンプとして仕事を受けたいと交渉していましたが、上場企業であることもあってそれは難しく、結局一人で“突入”しました。そして社内改革を行い、三菱商事に経営をバトンタッチしたというのが僕の成果でした」
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文=青山鼓 写真=Kenta Aminaka

この記事は 「Forbes JAPAN 地方から生まれる「アウトサイダー経済」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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