街の変化は不動産にすぐ現れる。大金を手に入れた若者が目指すのは不動産だ。今回、IPOを実施すると思われる企業はサンフランシスコに拠点を置いているため、サンフランシスコ周辺の住宅相場に関心が寄せられている。
特に空いている土地が少ないベイエリアでは、住宅価格の相場がどんどん上がってしまう。サンフランシスコでは200万〜500万ドル(約2億〜5億円)が住宅価格の相場になるだろうと予想されている。
売りに出される家が目だって増えてきている(著者撮影)
どんな小さな家でも、たとえそれが火事で焼けたオンボロな家であろうと1億円以下では家が買えないという異常状態が起きているほど、不動産や家賃が急上昇を続けている。住居費の負担が重くのしかかり、IT業界にいない人はもちろん、業界にいても生活が苦しくなっている。
仕事はあるけれど住むところがない
家を持てない人がサンフランシスコでアパートを探しても、ワンルームの小さなアパートが最低でも3200ドル(約35万円)が相場だ。だから、サンフランシスコの低所得者層は、家族で1200万円以下、月収100万円以下とされている。
普通の仕事、たとえば事務職、販売職、教師、公務員、サービス業の人がこのエリアで家を探すのはとうてい無理な話だ。若い夫婦は、結婚しても両親の家に住むか、他の地域に引っ越すか、選択の余地は狭くなってきている。
他の州に比べると、仕事はあるけれど高い家賃が払えず、キャンピングカーや車で生活している人たちもたくさんいる。
ある日、我が家に来る庭師と話をした。彼はメキシコ人で32歳。3人の子供がいて今度4人目が生まれるというので、35万円のアパートの家賃なら、小さな家でも買ったほうが良いと思い、家を購入する申請書を出したら、彼の収入では申請書も受けとってもらえなかったという。ちなみに、彼の年収を聞いてみたら、1300万円だった。
年金生活者が住めなくなってきたサンフランシスコ
この基準から行くと、私などは生活保護が堂々と受けられそうなものだ。だが、今度は低所得者の保護を受けるには、並大抵ではなくなってくる。私のような宙ぶらりんの低所得者はまず、生活保護が受けられない。18歳以下の子供もいないし、持ち家ということから、リストからはずされる。まったく収入がないか、年収1500万円以上の収入がなければ、サンフランシスコ、サンマテオ地区での生活は難しい。一般でいうところの中流層が、もっとも生活が苦しいといえる。
そして家賃の高騰で、固定資産税も極めて高くなる。レストランも店自体の家賃が高いため、メニュー価格も日本の2倍から3倍になる。だから2人でランチに行くと45ドル(約5000円)はかかる。税金が8.5%に加え、チップ20%が必要となるからだ。夕食となると、90ドル(約1万円)は下らない。ガソリンも、他の州に比べると1ドル以上も高い。