そのリストの上位に名前を並べてきたのが、オーストラリアだ。最後にリセッション(景気後退)を経験したのは27年前。そう、27年前の1991年だ。先進国の中に、このような経験をした国は他にはない。
これほど長くそうした状況が続いたのは、中国経済が歴史的な急成長を遂げる中で、主に同国に原材料を供給してきた国の一つがオーストラリアだったことが深く関連している。オーストラリアが取ってきたその他の政策なども、適切なものだった。
だが、良いことには必ず終わりがくる。まだ正式にリセッション入りをしたわけではないが、オーストラリア経済の成長は鈍化している。
「2008年」の再来?
ニューサウスウェールズ大学のリチャード・ホールデン教授(経済学)によれば、オーストラリアは「実質的なリセッション」に入っている。同国の1人当たりGDP(国内総生産)は、2018年第3四半期と第4四半期に連続して減少した。
よくあることだが、これには不動産市場が関係している。同国の住宅ブーム(バブル)は、音を立てて崩れる可能性がある。
金融・ビジネスに特化したオンデマンド動画サービスの米リアルビジョン(RealVision)は先ごろ、オーストラリア経済は住宅バブル崩壊前の2007年のアイルランドのようだと指摘する内容の動画を紹介した。
「類似点」は、少し薄気味悪いものだ(以下、その内容を紹介する)。
国際決済銀行によると、オーストラリアの家計債務の対GDP比は昨年9月の時点で120.5%。世界で最も高い水準だった。アイルランドのこの比率は2007年、およそ100%だった。
また、オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)によれば、同国の家計債務の対可処分所得比率は188.6%だ。この比率はアイルランドでは2007年に200%、米国では2008年初めに116.3%だった。
RBAの統計によると、同国では世帯の家計資産(純資産)の3分の2以上が不動産に投資されている。この割合は2008年のアイルランドでは83%、米国では48%だった。さらに、オーストラリアの金融機関の融資は、全体の60%が不動産向けとなっている。
国際通貨基金(IMF)は2007年、アイルランドの経済と銀行システムの健全性にお墨付きを与え、「軟着陸」の可能性が高いとの見方を示した。IMFは今年3月、オーストラリアの不動産市場についても「軟着陸」に向かっているとの見通しを明らかにした。
シドニーとメルボルンの住宅価格は、それぞれのピーク時(2017年7月と11月)から14%、10%近く下落している。どちらの都市でも住宅価格は、投資用・自宅用の住宅向け融資がいずれも急減し始めたのと同時に下落に転じた。