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日本の不動産最前線

vichie81 / Shutterstock.com

「2020年以降は不動産価格や建築費が下がる」

なんとなく漠然と、こうした言説が流布されているが、結論を言えばそれはただのイメージに過ぎない。そこに特段の根拠はなく、2020年を過ぎても不動産価格や建築費が下がるといった状況は、このままでは訪れないだろう。

そもそもなぜ2020年なのか。これはおそらく東京オリンピック・パラリンピック開催をイメージしているものと思われ、過去の五輪開催国における実績を調べると確かに平均すれば五輪前後で経済や不動産価格に一定の上下動の波はみられる。

しかしこれを「経済のバイが小さい国・新興国」と「経済の大きい国・先進国」とに分けて調べると、前者には五輪の影響が顕著にみられるものの、後者にはほとんど動きはない。

1964年の東京五輪の際は、日本は高度経済成長の真っただ中。五輪に間に合わせるべく競技場や首都高などの道路、新幹線などのインフラを一気に整備、経済の高揚とその後の落ち込みを経験した。しかし、現在の日本はすでに先進国であり、成熟国だ。

例えばロンドン五輪においては英国政府が「五輪が不動産市場に与えた影響は、なかった」としたレポートを公表している。今回の東京五輪もおそらく、その前後で経済動向に大きなうねりや、ましてや不動産市場に大きな動きはなく、変化が起こるとしても、選手村ができる中央区晴海など一部に限られよう。

もう一つ連想できるのは「建設需要」だ。建築費は「コンクリートから人へ」の民主党から自民党への政権交代が行われた2013年以降20~30%程度上昇しており、現在も下げ止まりの兆候はないが、2020年の五輪が終われば建築費高騰の波も収まるのではないかといった向きだ。

実際にそのように予想して、建築や、マンションの大規模修繕を2020年以降に先延ばしする動きもみられる。しかし、おそらく2020年以降も建築費は下がらないどころか、むしろ上昇圧力があるはずだ。

なぜなら、前述の建設需要に加え、高齢化に伴う折からの建設職人不足で、2018年時点ですでに多くの建設会社が2022~23年程度まで受注見込みを抱えており、すでに住宅・オフィスビルともに工期の遅れが慢性化している。例えば新築一戸建ては通常3カ月もあれば完成するものの、大工が確保できず、4カ月、5カ月、時には6カ月と後ろ倒しになっている現場が散見される。オフィスビルなども同様だ。

工事現場の機械化など、ほぼ無人で工事が行えるほどのテクノロジーの進展はこの状況を一変させる可能性があるものの、2020年時点ではそうした技術革新は望めないだろう。それどころか五輪以降に建設や大規模修繕工事を行おうと思っていた向きが一斉に工事は発注へと動き始めれば、工事費は下がるどころかむしろ上昇する可能性もある。

文=長嶋修

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