2008年のリーマンショックは、なんとか生き延びてきた建設業者に大打撃だった。さらに2009年には政権交代が起こり、鳩山政権は「コンクリートから人へ」を掲げて公共事業の削減を目指した。建設業者にとってはリーマンショックで資金繰りが悪くなったところに仕事も激減、建設業者の廃業が相次いだ。
そして2011年の東日本大震災。関東圏の建設職人の多くは復興のため東北に行き、関東圏の建設現場は関西圏から建設職人を集めるなど、慌ただしい状況が続いた。
2012年には安倍政権が発足、それまでの民主党政権の方針を転換して公共事業の拡大を宣言。これで人手不足がさらに加速する。2013年には東京五輪の誘致が決まるが、この時には建設業者の間で「五輪に向け、いったい誰が工事をするのか」といった声すらあがった。
おりから建設職人の高齢化が問題視されていた建設業界では、リーマンショックで引退した高齢の職人が再び建設現場に戻ることはなかった。若手も「きつい・危険・汚い」の3Kとされ給与水準も決して高いとはいえない建設業に魅力を感じないためかさして流入もなく、恒常的な人手不足が続いている。
建設業の就業者数は1997年の685万人をピークに、2017年には498万人と3割弱も減少しており、この減少傾向は今後も続く見込みだ。
人手不足は工事の量や質の低下・劣化を生み、建設会社にとっては頭痛のたね。東京商工リサーチがまとめた7月の「人手不足」関連倒産は、建設業が12件と最多だった。
建設職人の高齢化や若年層の不足、リーマンショックやアベノミクスで人手が不足してきた経緯は、五輪は要素の一つに過ぎず、建設費の高止まりの大きな要因となり、住宅やオフィスの建設、マンションの大規模修繕工事などに今後も大きな影響を与え続けるだろう。
さらに2019年10月には消費増税が予定されている。実現するかは未知数だが、増税となればむろん建築費のコストアップ要因だ。
五輪開催の2020年を区切りとして不動産価格や建築費が下がるといった要因は特段見あたらないといっていいだろう。
連載 : 日本の不動産最前線
過去記事はこちら>>