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国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」

中国製のLDV T60

2009年からオーストラリアで中国製の自動車が販売されていると言ったら、日本では驚かれるかもしれない。

南半球のこの国に最初に上陸した中国車はグレート・ウォール(長城汽車)というブランドのユーティリティ・カーだった。しかしその後の10年で、チェリー(奇瑞)、ジーリー(吉利)、フォートン(北汽福田)、ハーヴァル、MGそしてLDVなどが次々と上陸。ちなみにMGもLDVも、もともとイギリスのメーカーだが現在はSAIC(上海汽車)の傘下にある。

自動車メーカーのないオーストラリアはいま、中国の新しいメーカーにとって、巨大なテストケースになっていると言っていいだろう。120万台規模の市場で、世界の60ものブランドが競っている。こんな競争の激しい市場に食い込むには、特別な魅力を持っていないと難しい。

しかし、それを実現してきたのがトヨタとマツダだ。両者を併せたオーストラリア市場のシェアは30%弱。トヨタが全体の18%を占め、マツダも10%弱と人気が高い。中でもトヨタのハイラックスは、アウトドア重視のこの国のライフスタイルにぴったりで一番売れている。一方のマツダは、一度好きになったら飽きることのないスタイリングと、優れたハンドリング、そして競争力のある価格で惹き付ける。

そんな市場で利益を上げようと狙うのが中国車だ。とはいえ、巨大な人口を持つ中国のメーカーで、競争力のあるデザイン、信頼性、安全性を併せ持ち、日本などのライバルに挑戦できるようなモデルを出してきたところはまだない。唯一、中国最大の自動車メーカー、SAICが最近発売したLDV T60ユートは、まんざらでもないかも知れない。SAICは数年のうちにオーストラリアのユーティリティー車市場の10%を獲得しようと狙っている。

では、テストケースでの現状を見てみよう。2016年に故国イギリスで再びそのラインナップを発売し始めたMGは、今度はオーストラリアにGSと新型ZSを投入した。だが、2017年に売れたのはわずか600台だった。

実は、オーストラリア市場の中国車に対する鈍い反応はMGに限らず、すべてのブランドに共通している。オーストラリアの衝突実験で5つ星が獲得できたLDV T60の2500台と対照的に、他の中国ブランドの販売力はかなり減少。2017年の販売台数は、グレート・ウォールが404台、ハヴァルが710台、フォートン371台。チェリーに至っては7台だ。どれも50%以上激減している。

この寂しい成績の理由は何だろう。実はオーストラリアのユーザーは性能がよく、信頼性が高くて安全なモデルがあたり前だと思っている。しかも市場は飽和状態なので、価格競争も激しく、ちょっとやそっとでは触手が動かない。

例えば、中国製LDV T60は確かにこの市場でおそらく最も低価格のピックアップ・トラックだが、最も売れているトヨタ・ハイラックスと競わなくてはならない。ハイラックスといえば、世界で一番頑丈と言われ、壊そうとしても壊れないクルマだ。そして、安全性と信頼性こそは、環境が厳しいこの国のユーザーが絶対に譲らない要素なのだ。

文=ピーター・ライオン

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