料理をしながらスマートスピーカーに明日の天気を尋ねるというように、生活を邪魔せず情報を手に入れることができる音声は、検索や情報収拾に向いている。しかし、スマートスピーカーが登場してから数年経った現在でも、そのように音声技術を活用している人の姿を見かけることは、あまり多くない。
そんな中で、「企業の音声認識技術活用」を調査・支援している企業がある。電通イージス・ネットワークに所属するマーケティングエージェンシーの「iProspect(アイプロスペクト)」だ。世界55ヵ国、4300人のネットワークを有する巨大な組織は、ゼネラルモーターズやマイクロソフトなどのオンラインマーケティングを支援している。
彼らは、定期的に音声技術に関するマーケット調査や市場予測を公開。5月31日には音声アシスタントの最新トレンドや未来について語る公式イベント「VoiceUI Show」を開催し、アマゾンジャパンも協賛する。
「企業×音声認識」の現状、そして将来性とは? イベントに先駆けて、iProspect Global Director of VoiceのNate Shurilla (ネイト・シュリラ)と、iProspect Japan COO(チーフ・オペレーティング・オフィサー)の渡辺大吾に聞いた。
日本の利用率は低調。伸び率高いのは中国やインドネシア
iProspect提供
──まず、他国に比べて日本の音声認識の利用状況はどうなのでしょうか。
ネイト・シュリラ(以下、シュリラ):我々が2018年にネットユーザーを対象にした調査によれば、日本の音声認識技術利用者は40%程度で、決して高いとはいえません。UK(25%)やフランス(32%)に比べると多少は上ですが、すでにスマートスピーカーの世帯普及率40%を超えるとの調査(米Voicebot調べ)もあるアメリカに比べるとまだまだです。
ほかに注目すべきは中国(77%)やインドネシア(62%)です。アメリカや日本などでは音声認識の精度をまだ十分に信頼しておらず、文字で検索した方が早いと考えている気がします。特に日本人は、屋外でスマホに向かって話しかけることに抵抗感があるようです。ですが、これらの近年急速に発展している国は、躊躇うことなく街中でもどんどん音声認識を使っていますね。
渡辺大吾(以下、渡辺):ビジネス面での利用は、全世界的にまだまだです。仮に商品を買うとしても一度購入したものを再び注文する程度で、初めての商品をスマートスピーカー経由で買う人はほとんどいません。企業側の取り組みとしても、まだ購入までの導線として検索精度を高めている段階です。