農学者になる夢があったが叶わず、金融業界でリース業に数年携わり、その後は27年間、家業の財務を見る仕事をしてきた。そして財務の専門家から長い道のりを経て、自らの名前を冠したホールディングの所有者となった。
「ラ・コッリーナ・デイ・チリエージ」は、イタリア北部ヴェネト州の都市、ヴェローナからほど近い、ヴァルパンテーナ地区のグレッザーナという土地にある。
レッシーニの山々を眼前に臨む丘陵地で、このワイナリーはすでに、とくに「アマローネ」「レチョート」「ヴァルポリチェッラ」の3品種を醸造している。いずれもヴェネト州の気品高い赤ワインだ。
「難しいことに挑戦することで、奮い立つ性分なんです。ぼくが『スーパーヴァルパンテーナ』と呼んでいるスーパーワインをつくることは、まさに、自ずと自分自身を鼓舞するようなチャレンジです」
ジャノッリ氏はフォーブス・イタリアのインタビューに答えてこう話した。
「トスカーナ州で“スーパートスカン”(トスカーナ州ボルゲリ地区で醸造された高級ワインの総称。カベルネソーヴィニヨン、メルローなどの国際品種を使い、イタリアのワインの伝統や制度に縛られない醸造方法が特徴。「マッセート」、「サッシカイア」、「オルネッライア」などが有名)を造るために生産者がやったことを勉強したんです。
スーパートスカンは、昔からのワイン醸造の伝統を持つ土地で、しかし、世界に知られるその土地のワイン造りの歴史をいったん『なかったこと』にして作られたワインです。原産地呼称もにも縛られず」
マッシモ・ジャノッリ、ぶどう畑にて(Courtesy Collina dei Ciliegi)
ブドウ品種サンジョヴェーゼが育つ土地で、フランス、ボルドーワインのブレンド法に着想を得て作られたスーパートスカンは、結果、キアンティワインの土地と、ボルゲリ地区の両方を世界に知らしめることになった。そして、これこそが、ジャノッリ氏が貫こうとする哲学だ。
唯一の違いは、ブドウ品種。彼がブレンドに使用するのは、ヴェネト州でも多用されるカベルネソーヴィニョンやカベルネフランク、メルローのようなフランスのブドウ品種ではなく、コルヴィーナ、テロルデゴといった地元の品種だ。
この地域のイノベーションにもなりうるが、そうするとこの新種ワインには、「アマローネ」をはじめとするこの地域の原産地呼称は使えないことになる。
「われわれが苦労するのは、この新商品のための新しい呼称づくりです。その呼称によって選ばれる重要なワインにふさわしいものを。そのために、多くの重要なシャトーのコンサルティングを担当したフランスの高名な農学者や、ブドウ品種の世界的リーダーとも言える専門家に依頼して、標高600〜700mにわれわれのワイナリーが所有する47ヘクタールのうち21ヘクタール分について、土壌や接ぎ木用の台木、ブドウ品種の最適なクローンを研究しました。
これらは新しいワインを生産する上で重要な要素です。いずれにしても、この新種ワイン用のブドウの収穫は2022年以降の予定なので、最初のワインが完成するのは2024年よりも先ですね」
ジャノッリの野望は、将来的に世界的評価を得て、「ボルゲリといえば、サッシカイア」のように、「ヴェネト州ヴァルパンテーナといえば……」と誰もが知る有名な高級ワインとして認知されることなのだろう。