新種ワインの完成を待ちながらも、スタートアップ企業にも関わらず、すでに40万本のワインを生産販売しているという。実はその販売には、一家が情熱を注ぐサッカーチーム「ACミラン」の力も借りている。「ラ・コッリーナ・デイ・チリエージ」は、「ACミラン」とパートナーシップ契約を結んでいるのだ。
ほかにも、インテルとACミランのホームスタジアムである、ミラノの「サン・シーロスタジアム」のVIP向けスカイラウンジとも提携している。ミランのチームカラーである赤と黒を使ったラベルの「アマローネ」は、中国でも販売しているという。
「ミランは中国でよく知られていて、『アマローネ』は販売数の40%が中国市場に輸出されています。このままこれを継続できればと思っていますが、2019年は北アメリカ市場にアプローチする年にしようとも考えています。北アメリカの市場は中国市場に比べてずっと熟成しているので、パートナーとのコラボレーションをテコに、インパクトのある方法で参入する計画です。詳細は明かせませんが」
「赤×黒」のラベルは、北アメリカにも上陸するらしいが、ジャノッリ氏はこれについては多くを語らない。
(Courtesy Collina dei Ciliegi)
並行して、彼は未来にも想いをはせる。
「ぶどう畑やワイナリー、ワインリゾート『カ・デル・モーロ・ワインリトリート』や、これらがある地区の改修に10万ユーロ(約1270万円)ほどをあてて、現在、弊社は数百万ユーロの売上げがあります。まだ投資をすべきものがいろいろありますが、いずれは株式を公開するつもりです。
できればクラブ・ディール(開発途上国向けや海外の大型事業向けなどの貸出の方法。金額が大きいローンにおいて、幹事銀行が中心となってシンジケートを組織し、複数の銀行が借入人に貸し出しをする。総合フードマーケット「EATALY」創業者のファリネッティ氏もこれを行った)によって、このプロジェクトを支持してくれる人たちに株式を公開し、4、5年以内に上場を目指したいと思っています。
確定事項はまだありませんが、わが社はいったん離陸したら、いずれ株式を公開し、ほかの株主からもサポートされていくのが正しい道だと確信しています」
ヴェローナを世界のワイン都市にした歴史に関わる多くの規範を、一人頑固に壊そうとするこの「変わり者のワイン生産者」にも、意外な「社会的」一面があるということかもしれない。