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2019.04.10

「児童労働の撲滅」掲げるチョコメーカーが英市場に進出した理由

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カカオ豆の生産から奴隷労働を撲滅することを目指すオランダのチョコレートメーカー、トニーズ・チョコロンリー(Tony’s Chocolonely)は今年、英国市場への進出を果たした。

同国でトニーズの商品を取り扱うのは、高級百貨店セルフリッジズの2店舗の他、スーパーマーケット・チェーンのホールフーズやウェイトローズ、セインズベリー、オンラインスーパーのオカド(Ocado)など。同国を拠点とする国際慈善団体、オックスファムでも購入することができる。

英国のチョコレートの消費量は、世界5位だ。1人当たり年間7.6㎏のチョコレートを消費している。チョコレートの市場規模はおよそ35億ポンド(約5140億円)。欧州連合(EU)からの離脱が予定される中でも、トニーズが同国に今年進出することを決めたのは、そのためだ。

同社の英国事業を率いるベン・グリーンスミスは、「トニーズはカカオ産業を変え、奴隷的労働を撲滅し、児童労働をなくすためにある。半年前でも半年後でも、私たちを動かすのはそのミッションだ」と言い、ブレグジットで状況が複雑になろうと買わないという。

同社は(当初予定されていた)ブレグジットが数カ月後に迫る中で英国進出しただけでなく、広告掲載費を支出しないという厳格な方針も掲げている。そのため講演を行ったり会議に参加したり、大学を訪問したりすることなどを通じて、カカオ産業における違法な人身取引への関心を高めようとしている。

自社の活動も監視

トニーズは米国の非営利団体「B Lab」が運営する認証制度に基づき、社会的持続可能性や環境に配慮した事業活動を行っている企業と認められた「Bカンパニー」の1社だ。オランダ国内におけるチョコレート・バーの販売では最大手の1社であり、昨年は前年比22.5%の成長を見せた。

同社の最新の年次報告書には、自社が生産を委託する農場を含め、カカオ産業における児童労働に関する統計が掲載されている。

報告書によれば、世界で生産されるカカオ豆は、およそ60%をガーナ産とコートジボワール産が占める。両国には合わせて約250万軒の農家があり、210万人近い子供たちが違法な労働に就いている。両親がカカオ豆の生産で十分な収入を得ることができないためだ。

トニーズは報告書で、自社が提携する農家で確認された児童労働の問題についても指摘。その中には、重労働や(体を保護するための)適切な作業着を与えずに働かせていたケース268件が含まれている。同社は提携する農家での児童労働の問題について、常にモニタリングするシステムを導入している。

さらに同社は報告書で、「生産方法をどのように変えられるか、確認した問題をどのように解決できるか」を示している。小売業者は取り扱う商品を決定する際に、選択をすることができる。それが消費者の認識や購買の決定に関する変化をもたらすことになるという。

だが、トニーズが特に重視しているのは、世界のチョコレートメーカー大手7社だ。グリーンスミスは、「農家は基本的に、生計を立てるのに十分なだけの収入を得ていない。これが変わらない限り、状況は変わらない」と語る。

編集=木内涼子

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