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世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

Hans Geel / shutterstock.com

多くの米国人にとって、チョコレートは生涯の友だ。たくさんあることは、良いことでしかない。だが、その原料であるカカオ豆の約70%を生産する西アフリカにとって、供給量が多いことは悪夢だ。

アナリストらは5年ほど前、チョコレートは世界的に大幅な供給不足になると予測した。中国とインドで重度の「チョコホリック」(チョコレート中毒の人)が急増し、供給量を食べ尽くしてしまうからというのがその理由だった。

供給不足に陥るとの懸念には、もっともな根拠があった。生産者の高齢化と低賃金による後継者の不足、そしてカカオの樹齢が増すことも問題視された。カカオの木も年を取れば、つける実の量が減少するためだ。さらに、気候変動はすでに、赤道周辺に集中する産地に大きな打撃を与えていた。

だが、ココア(カカオ)の国際市場に関する分析を行い、価格安定に向けた需給の調節を行う国際ココア機関(ICCO)の元主席エコノミストは、現実の市場について、これとは微妙に異なる見方をしている。2008年の世界金融危機が、情勢を一変させたというのだ。

チョコレートの消費量は新興国では増加しているが、欧米を中心とする従来の市場では、ほぼ増えていない。さらに、その後は西アフリカで好天が続いたことから、カカオ豆は大豊作となっている。そうした条件がそろったことで、商品先物市場ではカカオ豆の価格が急落。数か月のうちに、1トン当たり約3000ドル(約34万円)から2000ドル近くに下落した。そして、その水準は今も同程度にとどまっている。

価格下落の影響

今年10月からの新年度でも、カカオ豆は前年度に引き続き、供給過剰が続く見通しだ。需要については英紙フィナンシャル・タイムズが先ごろ、「今年度は世界的に約2%、アジア地域でおよそ3~4%の増加が予想される」と伝えた。

こうした予測は、すでに限界の状態にあるカカオ豆の生産者らに対し、重大な結果がもたらされることを意味する。前出のエコノミストによると、世界のカカオ豆の生産量の90%を担っているのは、最低限の利益しか得ていないカカオ豆の農家だ。そして、その彼らが手にするのは、チョコレート市場が生み出す価値のわずか6%だ。

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Alejo Miranda / Shutterstock.com

成長が見込めない、持続可能ではないとして、カカオ豆の栽培をやめる農家も多い。だが、誰も彼らを責めることはできない。フランス開発庁(AFD)と世界最大規模のココア製品・チョコレートメーカー、バリー・カレボーが今年2月に発表した調査結果によると、コートジボワールでは、カカオ農家の1日当たりの収入は、同国の貧困線を大幅に下回る約1ドル(約110円)だ。

さらに、こうした問題はカカオ豆やチョコレートに限られたものではない。特にコーヒーや小麦など、生産と消費が切り離されている商品の生産者たちにとっては、大きな問題となっている。

カカオ豆なしでは、チョコレートの生産はあり得ない。そのような将来は、筆者にとっては悪夢だ──私たちは、どうすればいいだろうか。こうしたパラダイムを変化させるために、チョコレートに目がない人たちが果たせる役割はあるだろうか?私たちはこの問題について、考えていかなければならない。

編集=木内涼子

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