しかし、明治によるとザ・チョコレートは発売後1年で3000万個売れた。この数字は一種の社会現象と呼んでいいものだ。
明治が高級チョコレート市場に挑戦したのは2回目で、2014年の前回は売れなかった。実験的スタンスを欠いており、面白みのない商品になってしまったのが理由だろう。そして今回は、日本の消費者に馴染みがないものも含め、味の特徴をはっきり打ち出すチャレンジに出た。
日本の板チョコは、通常は横長のデザインとなっているが、ザ・チョコレートは伝統を破り、縦長のデザインにした。同製品はいくつかのタイプがあり、パッケージの色や柄はそれぞれ違うが、どれも中心にこだわりのカカオの実をあしらった。
ザ・チョコレートの成功の鍵となったのは、中央に描かれたその“カカオ”なのだ。ラベルに印刷されている「BEAN to BAR」が核となるコンセプト。明治はチョコレートの原材料のカカオの品質を確保するため、海外のカカオ農家と直接取引した。大半のメーカーが加工処理されたカカオを買う中で、明治のスタッフは海外のカカオ栽培農園を訪問し、関係を深めてきた。
チョコレート通の日本人が増えたことを考慮し、明治はザ・チョコレートのパッケージに、正確なカカオの量を表示して売り出した。ダークチョコレートの健康へのメリットは日本でも広く知られており、健康志向のファンの心をとらえることに成功したのだ。
様々な食感が味わえる工夫も
パッケージの裏側には製品ごとの甘みや酸味、ミルク感やビター感といった指標を図で表示した。クラフト調のデザインは幅広い層から愛され、インスタグラムにも盛んに投稿された。パッケージを再利用してつくられた本のしおりなどの手作りグッズの写真も投稿された。
また、パッケージ以外でも細かい工夫がなされている。1枚のチョコレートが数種類のブロックからできており、食べるときに様々な歯ざわりや食感が得られるのだ。
ザ・チョコレートは現在、コンフォートビター、エレガントビター、ブリリアントミルク、サニーミルク、ビビッドミルク、ベルベットミルク、抹茶(緑茶)、フランボワーズの8種類のフレーバーを展開。オレンジ色のパッケージのエレガントビターは、赤ワインとの相性も良い。
ザ・チョコレートは安価なチョコレートと高級チョコレートの中間的な商品として、昨年はバレンタインデー用のチョコとしても女性たちから歓迎された。明治はわずか2ドルほどの価格で、高級感あふれるチョコレートを実現した。ザ・チョコレートを食べたら、アメリカ製のチョコレートは口にできなくなるかもしれない。