Soo Boo Koh:それは、社会の問題ですね。シンガポールには、幸いなことに男性に対して女性もどんどん競争していく文化があり、それを支えるインフラがあります。女性は卒業して、結婚や出産後も仕事を続けます。家事はヘルパーを雇ってやってもらうことができます。我が家では、私の母がヘルパーを監督して、私は会社経営の仕事を続けました。家事は専門の人に責任を持ってやってもらうのがいいでしょう。私は仕事を終えて、家に帰ると(家事をせずに、子供の)読み書きを手伝ったりできました。毎日、2時間は子供と頭脳作業をする、それ以外のことはしなくていいと決めました。子供たちには自立して自分で生活と勉強をするようにと教えていました。娘はスタンフォードに行きましたし、息子も優秀です。こういったトレーニングの結果だと思います。それは、社会全体の話だと思います。
Hyunjoo Je:韓国の出生率は毎年下がっています。家の中に大きな不平等があるからです。若い女性、キャリアを作りたい人たちが、結婚して出産するという道を選ばなくなっています。社会の大きな問題になっています。米国も同じです。将来世代のためにも、男女ともに教育がますます重要になっていますね。
教育で自信をつけ、「リスクテイカー」を育てる
シンガポールのVC、iGlobe Partnersの創業者で経営パートナーのSoo Boo Koh。長年米国を拠点に、シンガポール政府関連のCVCを担う。
Soo Boo Koh:教育に関しては、重要な点が2つあると思います。一つはテクノロジーによる破壊的なイノベーションです。多くの既存の労働力は次世代にとって十分なスキルを持っていません。そこで生涯教育が重要になります。今までは大学に行って学業が終わり、職場に行った後は学業に戻りませんでした。しかし、今では再教育が必要です。仕事の将来は大きく変わってきています。
もう一つは、若いころの教育環境です。これは非常に重要です。それを通じて、子供がリスクを取る「リスクテイカー」になるかどうかが決まるからです。我々の調査によると、自己肯定感とリスクを取る許容度には関連があることがわかりました。積極性があって、自己肯定感があれば、リスクを取れるということです。特に子供が小さい時に自信を持たせることで、喜んでリスクをとれるようになります。こうして起業家精神が生まれると思います。
興味深いことに、自己肯定感は直接的にテストの結果にも影響を与える、ということも同じ調査からわかっています。ほぼ同じ学力の子どもたちを男女別のグループに分け、その半数に対して事前に「このテストはあなたたちにとっては簡単です」と言います。簡単だと言われたグループは、言われないグループよりも点数が高くなりました。特に、女の子のグループはその点数の伸びが大きい。男の子のグループはそれほど点数が伸びませんでした。このテストは様々な国で行われどの国でも同じ傾向が得られています。自己肯定感を与えることは、女性に対してより大きな影響があることが分かっているのです。社会文化的な文脈で考えると、特に、アジアでは重要な要素になると思います。女の子の方がエンパワメントで自信を高め、それによってパフォーマンスが上がり、より良い結果が出てくる可能性が高いということです。
Hyunjoo Je:私は、韓国のVC100社ほどのなかで、たった3人の女性CEOの一人です。多くの起業家に接して言えるのは、女性の起業家は「失望させるのを怖がる」ということです。そうすると、積極的に人に働きかけて資金を獲得するのに不利になります。理由は主に、社会的なプレッシャーや全体のマーケットの状況にあると思います。