自分の言葉で言語化する、私がアクティブラーニングで学んだこと

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「未来の大学」といわれるミネルバ大学の社会人向けコースで学び、1年半に及ぶCornerstoneコース(基幹授業) を終えました。このコースでは、従来型の先生1人に多人数の生徒というレクチャーではなく、議論とグループワークが主となる「アクティブラーニング」の形式をとっていました。オンラインのグローバル大学院のプログラムとしては、世界初のものです

最近では、ミネルバ大学以外の先進的な学校で、小学校の段階からアクティブラーニング形式が授業に取り入れられ、生徒の思考力を強化するケースが、欧米をはじめ日本からも出てきているようです。

従来のレクチャーとアクティブラーニングと違いはというと、前者が先生が中心となって運営されるのに対し、後者は学習する者が中心となって運営される授業となります。評価の仕方も、生徒全体の成績との比較で生徒のレベルを決定するのではなく、生徒個人の習熟度に重きを置き、先生が生徒の強みと弱みをフィードバックするのがアクティブラーニングです。

そして継続的にこのフィードバックのループを繰り返し、生徒個人が、学習内容を応用しながらマスターしていくのですが、授業では単にレクチャーの内容を聞く以上に、積極的な参加が求められます。

たとえば、議論やグループワークなどのタスクに集中しながら、同時にそのタスクが授業の目的とどうつながり、自分がどのレベルに到達したのか、と思考することも求められます。目の前のタスクに没頭しながら全体を俯瞰することを繰り返していくことで、高い次元の学習到達度が得られていくのです。

オンの顔で臨んで失敗したこと

いわゆる従来型の義務教育を受け、アクティブラーニングのネイティブ世代でなかった私が、大人になってからこの学びを経験し、どんな点がカルチャーショックで、苦労した点だったのか……。振り返ると、シンプルですが、それは「素の自分を出す」ということでした。

アクティブラーニングでは毎日、質と量の両面で高いレベルの努力を注ぐ必要がありました。優秀で探究心の強いクラスメイトは事前課題をしっかりこなし、積極的に授業に臨んでいました。

授業はスピーディーに進行し、かつテーマもサイエンスから経済学まで多岐にわたる。自分の知識にも限界があるなか、正解がないような複雑な問いに対して最適の解答を考え出す必要がありました。

授業に参加しクラスに貢献する態度ももちろん求められますが、それ以上に自分の習熟度を示すことが問われます。どれだけ自分なりの言葉で語り、自分の習熟度を俯瞰できているか、が評価されるのです。1人1人の解答が違うのは当然で、他のクラスメイトと比べ、自分の解答はどう異なるのか、という点を考えることも重要となってきます。

従来の授業では、模範的な解答があるなかで、それに近い解答を述べると、ある程度高い評価が得られました。逆に間違っていると、失敗と判断されてしまう。なので、私は授業中、合格圏内に入るため、素の自分を自然に消し、普段よりも少しかしこまった、オンの顔をしていました。 休憩時間に友人と話す、オフのときとは別の、ややあらたまった顔です。
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文=橋本智恵

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