「何ですか、それは? 授業中アクティブに歩き回るということ? それは困る!」と。
アクティブラーニングとは、生徒が能動的に学習するためのディスカッションなどを中心とする教育手法で、日本では、これまでの先生による一方的な指導と比べて新しい手法のように言われているが、ブラジルでは生徒が能動的に発信するのが当たり前すぎて、そんな概念すらない。
ブラジルのたいていの学校は二~三部制をとっており、午前の部、午後の部、夜間の部がある。たとえば、高校の午前の部に通うと、7時30分に授業が開始、その後途中の休憩時間を挟みながら授業が12時10分まで続き、その日は終了といった感じだ。昼食は自宅でとるのが一般的で、その後生徒によっては学校に戻ってきて任意選択の(有料の!)部活動に参加する。
午後の部に通う生徒はその逆で、午前中は家で過ごしたり、学校で部活動を行ったりし、午後に授業を受ける。日本と比べると授業時間が少ないように感じるが、給食や掃除の時間などを除けば、主要科目の授業総時間はたいして変わらない。
ブラジルの学校現場でアクティブラーニングという言葉は使われていないものの、授業は極めてアクティブラーニング的だ。先生の一方的な授業ではなく、先生と生徒が双方向に会話する時間が大半だ。興味深いのは、先生と生徒の会話が対等な議論であること。先生が偉いのではない。先生が「教える」のではなく、先生と生徒が一緒になって「学ぶ」のだ。
先生に、「生徒が間違った行動を取った時に、どのように注意しますか?」と聞くと、「生徒とじっくり会話することが何より重要です。叱らず叫ばず叩かず、先生も生徒もお互いが納得するまで話し合います」という。
当然、先生の方が生徒よりも人生経験が長いわけだが、たとえば、職業選択についても対等な議論が起こる。
先生は、自分自身が学生時代にどんなことを考えて、なぜ先生という職業を選んだかを語る。生徒は、そんな先生の話などを参考に、自分はどんな大人になりたいのか、そのためにはどんな職業につきたいのか、だからどんなことを今学ぶべきなのか、大学ではどんなことを勉強したいのかを語る。
それぞれの生徒が、各自の意見を語って、先生も生徒も互いにフィードバックしあう。双方向の議論を通じて、考えを深めていく。先生が、生徒の学力にあわせて、受験する大学や向いている職業などの進路アドバイスをすることが多い日本とは対照的だ。
そんな議論があるからか、ブラジルでは「やりたい仕事」があってそのために大学に行く、そのために勉強をするという人が大半だ。日本は、本格的に職業のことを考えるのは大学生が就職活動する時という人がほとんどだろう。