そもそも教える側がしっかりと理解していなければならないし、全ての教育の場において均質な授業が行えるようなカリキュラムを整える必要もある。さらに、なんでもかんでも学校で……となると、既存の授業と合わせて授業内容が過多になり、教師も生徒も疲弊してしまうという懸念もある。
そうなると、「金融教育は家庭で」というのが現時点では現実的な選択肢となる。親が子供にあげるお小遣いや、兄弟姉妹や友達とのおままごとを通じて、お金の勉強をしていくイメージだ。
お小遣いはすぐに使ってはいけないのか?
お小遣いをあげる時に、ほとんどの親はこう言うだろう。「無駄遣いしないで、ちゃんと貯金しなさいよ」と。そして子供は嬉しそうに「はーい」と返事をして、貯金箱があれば貯金箱に、貯金箱がなければ宝物をしまっている引き出しにお小遣いをしまうかもしれない。
貯金をすること、無駄遣いしないことは非常に重要である。親として、その重要性を説くことは当然ながら必須であろう。しかし、気を付けなくてはいけないことは、何も考えずにただ「貯めなさい」や「スグに使っちゃダメだよ」と言わないことである。しっかりと、その理由を話すべきだ。
お小遣いをもらってスグに欲しいものを買うのではなく、しっかりと貯金できる子供は自制心がしっかりと働いていると言えるだろう。親から見れば、自制心の働いた子供の将来には不安を覚えずに済むかもしれない。逆に言えば、自分の子供がスグに使ってしまうようであれば、非常に不安になるだろう。
自制心の必要性を説く「マシュマロ実験」
子供の自制心の有無が将来にどのような影響を与えるのかを検証した実験として、マシュマロ実験というものがある。
スタンフォード大学の心理学者であるウォルター・ミシェル氏が1960年代後半から1970年代前半にかけて実施した実験で、社会科学の実証実験としてはかなり有名なものである。
実験の内容と結果を簡単に紹介しよう。
当時の記録を見ると対象は186人と記録されているが、4歳児をそれぞれ机とイスだけが置いてある部屋に1人ずつ通す。机にはマシュマロが置いてある。そして、それぞれの子供に「これから部屋を出ます。すぐにマシュマロを食べてもいいけど、15分後に私が戻ってくるまで我慢出来たら、もう1つマシュマロをあげるね」と言って部屋を出る。その後、実際に子供がどのような行動をとったかを観察するのだ。
最終的には、約3分の1の子供が最後まで我慢できたという結果になったが、この実験には続きがある。実験を受けた子供たちのその後を調べた結果、当時我慢を出来た子供たちは大学進学適性試験(SAT)のスコアがよかった、BMI(肥満指数)が低かったという結果になったというのだ。