各メーカーの新作、今年のトレンドとは? 3日間にわたる取材の最終日のレポートをお届けする。(1日目 / 2日目)
この日は2つの有名な定番モデルを持つジャガー・ルクルトから始めた。
2019年、ジャガー・ルクルトは、「レベルソ」と並ぶブランドの顔として多くの名品を生み出してきたマスターコレクションから多くの新作が登場した。この「マスター」は、同社が19世紀末に125種ものムーブメントを製作するほどの創造性を誇っていたことを、現代においても証明しているコレクション。
最大の特長は、なんといってもケースバックに刻印された“マスターコントロール1000時間”にある。それは、最も有名な検査基準、C.O.S.C.(スイス公式クロノメーター検査協会)の検査よりも過酷な、ジャガー・ルクルト独自の基準によって得られる高い技術力の証でもある。
今年は、400年に1回ある閏年に該当しない2100年3月1日までは日付の修正は不要の複雑機構“パーペチュアルカレンダー”を搭載した「マスター・ウルトラスリム・パーペチュアル エナメル」が登場した。
カウンターは、3時位置に曜日、9時位置に日付、12時位置に月と年が表示された独自のレイアウトを採用。また6時位置では、北半球と南半球のムーンフェイズを同時に表現している。造形的には、ブルーのギョーシェ・エナメルダイヤルに加え、6時位置のムーンディスプレイに映る月にはポリッシュ仕上げを施すなど、精巧な技術が使われている。
ジャガー・ルクルト マスター・ウルトラスリム・パーペチュアル エナメル[自動巻き、18KWGケース、39mm径 605万円 問 : ジャガー・ルクルト 0120-79-1833]
次に訪れたのは、天才時計師ミッシェル・パルミジャー二の修復工房から発展したパルミジャー二・フルリエ。今年は、2017年に発表して好評だった「トリック」を中心としたラインナップであった。
「トリック」は、一見するとシンプルなラウンドウォッチだが、ゴドロン模様のベゼルや神殿の柱をモチーフにしたケースフォルムなど随所に個性が見られる腕時計である。そんなコレクションにパルミジャー二らしい独特の機構を載せた「トリック エミスフェール レトログラード」が登場した。
世界には40のタイムゾーンがあり、そこには1時間だけではなく、15分刻みや30分刻みの時差を定めているエリアがある。そんな変化する細かい時差修正にも対応したのが、モデル名にもある“エミスフェール”。ミシェル・パルミジャーニが2010年に考案した時差修正機能である。
第2時間帯は12時位置のスモールダイヤルで表示されており、大きなレトログラード式カレンダー表示が、このモデルの印象を決定づけている。
パルミジャー二・フルリエ トリック エミスフェール レトログラード [自動巻き、18KRGケース、42.8mm径 320万円 問 : 03-5413-5745]
そして、ユリスナルダンである。今年のテーマは「X(エックス)」。アルファベット最後の文字「X」は、法的文書の署名代わりになったり、染色体や世代や交差ポイント、掛け算やトレジャーマップ上の「スポット」などに使われるなど、さまざまな形で活用される。
Xploration(探索)、Xtraordinary(格別)、Xcess(超越)、Xperience(経験)、Xcitement(刺激)、Xtreme(極限)、compleX(複雑)などの「X」は、今年の「フリーク」コレクションにはピッタリなのだという。
2001年に誕生した「フリーク」は、脱進機を搭載した分針を持つ斬新なモデルだ。つまり、針型のムーブメントが1時間に1周することで重力の偏りをキャンセルするカルーセル機構を備えたものである。
新作「フリーク X」は、2018年発表の「フリーク ビジョン」に続くもので、サイズが45mmから43mmへと小径化。以前はリュウズがなく、ベゼルで時刻調整を行っていたが、新作ではリュウズが付き、操作がより簡単になっている。ケース素材別に4種類で展開されるが、このコレクションの先進性を考えると、軽量で耐久性の高いカーボニウムモデルがオススメである。
ユリス・ナルダン フリーク X [自動巻き、カーボニウムケース、43mm径 278万円 問 : 03-5211-1791]