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2019.03.08 12:00

「空飛ぶクルマ」を開発する日本人女性が提言する起業のススメ

NFT社CEO カプリンスキー真紀

NFT社CEO カプリンスキー真紀

「空飛ぶクルマ(Flying Car)」については、国土交通省が「空の移動革命に向けた官民協議会」をして、このところ日本でも注目を集めるようになりました。現在は、アメリカのウーバーやフランスのエアバス、ドイツのLilium Aviation、トヨタが出資したJoby Aviation(アメリカ)などの企業が、その開発に取り組んでいます。

しかし、2017年創業し、カリフォルニア州マウンテンビューに本拠を置くNFT社が掲げる「空飛ぶクルマ」のビジョンは、前述の企業より後発でありながらも、一頭抜きん出ています。垂直に離着陸できるeVTOL (electric Vertical Landing & Takeoff)というところまでは同じですが、走行と飛行の自動運転機能を実装して、劇的に小型(SUVサイズ)で低コストを実現しようとしているからです

他社の空飛ぶクルマは、航空機のイメージに近く、大きくてクルマのような走行機能がないため特別の2地点間、例えばヘリポートからヘリポートに移動するだけになってしまいます。一方、NFT社が開発をすすめているものはどの2地点間も乗り換えなしで結ぶ、つまり例えば自宅から近くのポートへ走行して離陸、目的地近くのポートに着陸して目的地まで走行する、という一般道路や駐車場も使う、より乗用車のイメージに近いものです。

スペック的にも、自動運転で他社と同等以上の走行(飛行)距離を実現しつつも、1機あたり何億円もかかる他社に比べ、桁違いの低コストを狙っています。

このNFT社のCEOを務めるのが、日本人女性のカプリンスキー真紀さんです。2月22日に東京ビッグサイトで行われた「Slush Tokyo 2019」に登壇するため来日した真紀さんは、「空飛ぶクルマ」の開発に関して次のように語ります。

「母親と3人の子供が乗れるものをつくって、と開発チームには指示してあります。door to doorでたくさんの人が使えるものをめざしています。このビジョンが実現できれば、空飛ぶクルマの用途は広がり、市場はより大きなものになるでしょう」

現状をこのように語る真紀さんだが、もちろん周囲からは厳しい言葉も受け取っているという。

「もちろん、そのようなクルマの開発は難しい、シリコンバレーに多々ある企業も諦めたことだ、などいろいろ言われました。しかし、私たちの開発チームには、イスラエル軍仕込みの技術を持った精鋭が揃っています。彼らは、無理だと言われるようなテーマに嬉々として挑んでいます。1年後に考えているデモンストレーション飛行が、いまから楽しみです」

イギリスの大学からイスラエルの大学院へ

カプリンスキー真紀さんの出身は愛知県名古屋市。エスカレーター式で大学へと進学できる高校に通っていたが、これでは駄目だと一念発起して、母親以外は猛反対のなか、イギリスの大学へ。最初は英語もままならないなかで努力を重ね、成績優秀で卒業します。在学中に研究のためイスラエルのキブツを訪れ、興味を持った真紀さんは、その後、イスラエルの大学院に進みます。

そして、大学院の卒業後に日商岩井の現地事務所に職を得て、そこで現在の夫であるガイ・カプリンスキー氏と出会います。これが彼女にとっては、大きなターニングポイントになりました。2000年代の始めに日商岩井の経営が悪化し、テルアビブ事務所も閉鎖となり、二人は政府系プロジェクトの会社をつくり、やがて結婚します。
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文=本荘修二

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