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2019.03.08 12:00

「空飛ぶクルマ」を開発する日本人女性が提言する起業のススメ


2011年、ハードからソフトに価値が移る時代に、いち早く日本企業の役に立つものをつくろうと、日本に住むのは初めてのガイさんと東京でIQP社を起業。同社では、まだIoTが騒がれる前に、コードを書くことなくIoTアプリケーションの開発を可能にするプラットフオームに挑みます。

しかし、出資の依頼はことごとく断られ、製品ができても、エンジニアのプルーフが欲しいと言われ取引は前に進みませんでした。ストレスに耐えながら、信じ抜いて夫婦で会社を続け、日本の大企業に初期ライセンスが売れます。

しかし、夫妻はさらに上をめざし、2016年10月にシリコンバレーに進出。すると、あっと言う間にいくつもの企業から話があり、翌年、従業員数20人のIQP社はGE Digital社に4000万ドル(約45億円)で買収されることになります。IQP社の製品はGEの産業用IoTプラットフォームの中核として、現在、世界の大企業に使われています。

そして、このIQP社の後に起業したのが、「空飛ぶクルマ」を開発するNFT社なのです。

電話会議中に母乳をあげていた

真紀さんたちは、スタートアップを次々と起業するシリアル・アントレプレナー(連続起業家)ですが、事業のテーマを考えるときは、複数の国の文化が交わることを軸にしていると言います。そして、常にソフトウェアで新たな未来を創っていくというビジョンも描いています。

「IQP社は、東京で起業し、イスラエルのテルアビブに研究開発センターを持ち、アメリカの企業に買収されました。NFT社は、シリコンバレーとイスラエルに技術者を抱え、日本企業とのアライアンスも視野に入れています。とりわけ私たち夫婦の出身地である日本とイスラエルの良さを生かせることを心がけています」



この言葉からは、真紀さんの日本に対する故郷愛も感じられますが、同時に次のようにも警鐘を鳴らします。

「最初はなかなか理解されなくても、できたものが素晴らしければ、良い結果が出ることはIQP社の例が示しています。しかし、シリコンバレーへと進出したことで、日本の今後は厳しいと感じました。アメリカがIoTでどう出るのか、日本から眺めている時点で負けです。リーダー企業になるためには、不断のイノベーションとグローバルな視点が不可欠です。日本からは、IoTであっと驚くような技術は出ていません」

そして、日本の女性たちには次のようなメッセージを送ります。

「日本の女性は、能力の高い人が多いのにもったいない。日本の将来を支えるであろう子供たちのためにも、女性が動かないといけない。自分で起業すれば、場所も時間もフレキシブルに働くことができます。私は、電話会議中に母乳をあげたりしていました」

真紀さんの人生を大きく動かしてきたのは、「すぐやる、思い切りやる」という行動規範だったと言います。情熱があるから行動するのでなく、行動するから情熱が湧くという、まさにその好例。だからこそ彼女は、どこよりも小型・低コストの「空飛ぶクルマ」という困難なプロジェクトに挑戦しているのです。

連載 : ドクター本荘の「垣根を超える力」
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文=本荘修二

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