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相澤康則(左)、志村彰洋(右)(写真=平澤潔司)

いま、技術は想像力を超えてしまった─ゲノムテクノロジーの進化がもたらす新しい思考とは。ゲノムシンキングが、世界のビジネスを加速させる。


2017年2月、UAEのMohammed bin Rashid Al Maktoum首相が100年後までに火星にコロニーを建設する計画「Mars2117」を発表し、世界中が期待に胸を膨らませた。47年に最初の移住が開始され、70年をかけて60万人もの地球人を移住させる計画なのだという。構想通りに準備が進めば、30年後には火星で生活をする人たちを目の当たりにすることになる。

そして、この壮大な計画を大きく後押しするかもしれないある構想に、いま、注目が集まっている。「Design Natural Resources - Mars from Scratch, Earth for regeneration -」。18年11月にUAE・アブダビで行われた世界的な石油・ガスエネルギーの展示会・ADIPEC2018にて、電通が展開したプロジェクト案だ。

地球人が火星で生活するために必要なエネルギー資源を、すでにそこにある元素を利用し、その場でつくり出してしまおうという。さらに、大気や土壌すらも、人間が住めるように変換させてしまえばいいのではないか、という大胆な構想だ。

「そもそも火星には、元素としての酸素も窒素も水素も存在しています。それらを生物システムで物質変換させることができれば、地球からロケットで物質を運ぶよりもはるかに速く、低コストで済むのではないかと考えたのです。その出発点となったのが、合成生物学。ゲノムの技術でした」

そう話すのは、電通 事業共創部ゼネラルマネージャーの志村彰洋だ。志村は、電通の社内外横断組織「Smartcell & Design」のビジネスディレクターとして、農業、工業、エネルギー、社会インフラなどあらゆる領域で、ゲノム技術を活用した常識を覆すアプローチを探っている。

「デジタル技術を活用した取り組みは、学生時代はもとより、電通に入社してからも長期にわたって行ってきました。私個人としては、ひと通りやり尽くした感覚があった。そろそろまったく新しい概念・技術を活用したビジネスデザインをしたいと考え始めたころに、『ゲノム編集』『ゲノム合成』という、“生物のOS”をデザインするような概念に出合ったのです。最先端の現場を見て学ぶために、すぐにボストンに飛びました」(志村)

ヒトゲノム、つまり我々人間が持つ遺伝子情報の配列が解明されたのは03年のこと。それから十数年が経ち、ゲノム解析は容易となり、16年当時はゲノム編集が流行ワードとなっていた。

「合成生物学や遺伝子工学の権威であるハーバード大学のGeorge M. Church教授や、ゲノム編集技術『CRISPR/Cas9』の開発者であるマサチューセッツ工科大学のFeng Zhang教授、さらにはバイオテクノロジー企業の先駆けであるGinkgo Bioworksの創設者・Tom Knight氏といった最前線の偉人たちに話を聞きにいくと、彼らはすでにゲノム編集の先のゲノム合成の世界に到達していました。

ウェットラボはほぼ機械化されており、『PDCA(「Plan=計画」「Do=実行」「Check=評価」「Action=改善」)』ではなく、『DBTL(「Design=設計」「Built=構築」「Test=試験」「Learn=学習」)』のマネジメントサイクルによって、ボタンひとつで機械が自動的にゲノム編集のクリエーションを行う、高速システムを構築していたのです。そうした中で、ボストンでは、ゲノム編集、ゲノム合成の技術は、すでにビジネスの中にもしっかりと取り込まれていることに大きな衝撃を受けました」

文=千木良美樹

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