人生には常にオプションを── 畑で学び、東京で生きるコムアイの半生 #NEXT_U30

「水曜日のカンパネラ」のコムアイ(写真=小田駿一)




──いまさまざまな分野で活躍されていますが、どういった意識で活動してきたのでしょうか。

少し前までは、とにかくいろいろなものに興味がありました。服も映像も好きだったし、自分自身が何者になるかわからなかったんです。監督や役者になるかもしれないし、文章を書くかもしれないって。でも今は、歌うってことはずっとやるだろうなと思っています。音楽がどんどんおもしろくなっているし、思考もシンプルになってきました。

──コムアイさんは、どうやって自分の興味関心や気持ちを確かめているんですか?

忙しかったり、周辺状況のパワーに影響を受けすぎたりする正しい判断をするのは難しいですね。朝起きたときに、寝ぼけた頭で考えたことが意外と良かったりします。東京を離れて飛行機に乗ったりすると、少し客観的に判断できることもありますね。

SNSをやめるのもいいですよ。このあいだ携帯をなくしたときはすごくラクだった。歌のことを考えたり、本読む時間も増えたり、メモをとる習慣も生まれました。ノートに映画の感想とか覚えておきたいこと書いたりするうちに、思考の展開が2ぐらいで止まっていたのが3、4って展開して、しりとりみたいに思考が変わっていくんです。



──自分自身でライブをやっているときはどんなことを考えていますか?

ライブの最中は、瞑想に近いかな。いろいろ考えたりします。楽曲をこうするとかじゃなくて、もっと大きいスパンで考える。占いみたいな感じかな。この先どっちに進もうか、みたいなことを色々考えています。私自身のことも、世の中のことも。

逆に自分がいいDJを観ているとき、みんながグワングワン踊って、空間全体が音楽に没頭していると、その空間が別の空間とつながっているように見えることがあります。未来なのか過去なのか、同じ時間の違う国かもしれないんだけど、人のエネルギーが高まった瞬間に、人生とか思想とかがパラレルワールドみたいに交差するのかなって。

クラブが洞窟に見えたり、未来みたいに感じたりこともあります。人がこういう気持ちになることは何百年も前からあっただろうし、この先の未来にもきっとあるはずだと思うんです。

特にエネルギーが集まっている場所ではそういう感覚を覚えます。例えば盆踊りとか、エロスとタナトスが共存している感じがほんとにやばい。死を感じて、それを生きることに変換する感じ。

この間行った岐阜の郡上踊りがすごく面白かったです。街の人たちが踊り連をやっていて、文化が人や街に根付いているんですよね。私も輪に入ってやってみると、だんだん体が勝手に覚えていく。同じ動きを繰り返して、止まれない動きをつくる。しばらくすると、おじいさんやおばあさんが踊っているなかにいつの間にか入れちゃう。
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文=長嶋太陽 写真=小田駿一

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