現地で、昨年末からの「Gillet jaune(黄色いベスト)」デモ騒動の報道などで、各国からの、なかでも日本人を含むアジアからの観光客のキャンセルが相次いでいることを知った。
そういえば、毎年必ずメゾンに出席してくれている岐阜県の某企業の社長さんも、「社員から、現地で何かあるといけないから今年は渡仏しないでくれと言われたので」と出発前に申し訳なさそうに断りを入れてきていたし、私も周辺の人々から「今のフランスは物騒だから気をつけて」と言われたことを思い出した。
とはいえ、デモは毎週土曜日に特定の場所で行われ、事前にその地域や運休になる交通機関等の情報が流されるため、わざわざその場所に行かない限り、基本的には安全だ。パリ在住の知人なども、シャンゼリゼでの最初の暴動のときには驚いたそうだが、今は、「フランス革命を実現した、最後までやめないフランス人気質を体現している運動のようなものだ」とクールに観ている。
「風評被害」が持つパワー
今回の状況は、ニュースなどでの映像が必要以上の危機感をあおり、観光客が旅行をキャンセルするという、いわゆる「風評被害」の現れでもあり、こういったことは今のパリに限らず、少なからず起きている。
2011年の東日本大震災後、原発の問題もあり、日本へのインバウンド観光客はパタリと消えた。その頃、私は岐阜県の観光局長になって3年目を迎えたときで、岐阜県に直接の被害はなかったものの、インバウンドを推進する責任者としては相当に悩んだ。
こんな時期に「観光」は何をすべきか、岐阜県に被害がなかったからと諸手をあげて「うちは安全だから来て下さい」と発信するのもどうかという想いもあった。
そうして1カ月、「日本は全部、危ない」という風評被害は各国に拡散し、次第に地元の観光事業者からも「このままでは倒産してしまう。なんとかして」との声も上がりはじめた。桜の蕾が膨らみ始め、本来なら観光のトップシーズンに向かう頃だった。
そんななかで、駆け足だったが、シンガポールとタイに出張する機会があった。そこで目にしたのは、東日本大震災のダメージ受けたのは日本だけではないということだった。