翌日、メゾンの会場でパリ在住30年の知人に今回の風評被害について尋ねたところ、彼女曰く「フランス人は、風評なんて気にしない。黄色いベストは、まあ、電車が止まるのは迷惑だけど、観光については、むしろ街中に大量のアジア人がたむろしなくてほっとしているんじゃない?」とのことだった。
確かに今年のメゾンの会場にも、例年よりアジアの人が少ない気がした。一連の風評被害に敏感なのは日本人も含めたアジア人の特性かもしれない。
日本で起きた自然災害が訪日外国人旅行者にどのような影響を与えたかを調べた「DBJ・JTBF アジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査(2018年度版)」によると、アジア諸国の旅行者から、日本は「自然災害が多い国」と高く認知され、それを理由に「当面の間、海外旅行の検討を差し控える国」としてトップに選ばれたという。
一方、欧米豪の旅行者からは、一連の自然災害への認知度はあるものの、アジア諸国のような訪日旅行の検討を中止するという際立った動きはなく、逆に、日本は、「自然災害は多いが、その復旧の早さや治安の良さにより旅先での安全性が高い国」という認識が高まったという。
パリはまったく安全だった
アジア人が日本の災害に敏感だということは、当然、諸国の災害や暴動にも敏感で、訪問をとりやめるという直接行動にも結びつきやすいということだ。こんな記事を書いている私ですらパリでの不安の感覚は、たぶんアジア人としての同様の理由からだろう。対する欧米豪の訪日外国人が、災害に対する日本人の対応を歓迎し、そこから「安全性」を導きだすという、この視点のギャップはかなり興味深いものだった。
そして学んだのは、今後も各国のこうした意識の違いを知ったうえでの冷静なつきあい方、そしてプロモーションが重要だということだ。
風評被害の問題だけでなく、日頃から各国が日本をどう観ているか? その意識のギャップを十分に認識して、ポジティブなキャンペーンにつなげていくことの必要性をあらためて感じた今回のパリ出張だった。もちろんパリは、自ら危険な場所に行かない限り、まったく安全だったことを、最後に声を大にして言っておきたい。
連載 : Enjoy the GAP! -日本を世界に伝える旅
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