中国はスタバにとって、米国に次いで2番目に大きな市場だ。自国で市場の飽和という深刻な問題を抱える同社には、なくてはならない市場だ。
だが、スタバはその中国市場でも、問題に直面し始めている。Luckin Coffee(瑞幸咖啡、ラックイン・コーヒー)など、地元の新興企業との競争が急速に激化しているためだ。
北京を拠点に2017年10月に創業したLuckinは、15時間に1店舗という猛烈なスピードで新店舗を開設してきた。店舗数はすでに2000店を突破。年末までには4500店に増やす計画だという。一方のスタバは、年内に4121店舗とすることを目指している。
Luckinの急速な事業拡大は、スタバにとっての「悪夢」になりつつある。理由は幾つかあるが、その1つは、Luckinが故宮(紫禁城)など多くの人の関心を引くような場所で開業することによって、これまでスタバが集めてきた注目を奪っていることだ(スタバがおよそ10年前、紫禁城近くにオープンした店舗の閉鎖に追い込まれたことは、よく知られた話だ)。
さらに、Luckinはスタバが中国事業において独占的な行動を取っているとして、同社への批判を強めている。仮に訴訟を起こされれば、スタバはその他の米国企業と同様、裁判への対応に多額の費用と膨大な時間を費やすことになる。
Luckin coffee(shutterstock.com)
Luckinの強み
Luckinはビジネスモデルに特徴がある。小規模な店舗とテクノロジー、短時間での配送に重点を置き、若い世代の消費者にアピールしている。さらに、商品の値段をスタバより2割以上安く設定し、価格競争も仕掛けている。
中国の経済成長が鈍化する中、スタバの市場シェアと売上高の伸び率、利益率への圧力は、高まることになると予想される。ウォール街はすでにこの点を懸念しており、米金融大手ゴールドマン・サックスは1月上旬、スタバの格付けを「買い」から「中立」に引き下げた。
一方、アナリストの中には、スタバの中国事業の業績見通しは妥当な内容であり、配送の開始といった取り組みによる増益にも期待が持てるとして、今後を楽観視する人もいる。「コーヒーは(たとえ高級に分類される価格でも)、1000ドル(約10万円)のiPhoneほど景気の影響を受けるものではない」という。