中国の消費者がiPhoneを買わなくなった「根本的な理由」

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アップルは1月2日に公開した投資家向けガイダンスで、2018年10月〜12月期の売上高が、当初の予想を大幅に下回る見込だと述べた。同社は以前の予測で売上高見通しを890億ドル〜930億ドルとしていたが、これを840億ドル(約8兆9800億円)へ引き下げた

アップルは売上の落ち込みの主要因の一つが、中国でのiPhoneの不振であるとしているが、これは一時的なもので終わらない可能性が高い。アナリストらは中国でアップルは競合との戦いに苦戦し、景気減速のなかでさらに売上を落とすとみている。

「アップルは根本的な戦略を見直さない限り、中国事業を回復させることは難しい」と調査企業カナリスのJia Moは述べた。アップルのティム・クックCEOは、売上不振の背景には景気減速や米中の貿易摩擦などのマクロ的要因をあげた。しかし、中国の一般消費者は高すぎるアップル製品に背を向け始めている。

調査企業カウンターポイントによると、アップルは同社の売上の5分の1を中華圏から得ているという。アップルは2018年に中国で4460万台を出荷したが、これは2017年から10%の減少だった。さらにアップルを不利にするのは、関税の問題だ。同社は組み立てを中国で行い米国に輸出しているため、両国から関税を課されている。

さらに、より一層深刻な問題なのが、アップル製品がかつての輝きを失いつつあることだ。代わって台頭してきたのが、クオリティの高い製品を安価で送り出す中国メーカーだ。

アップルが最新モデルの中で、最も手頃な価格の端末として発売したiPhone XRは、中国において6499元(約10万2700円)で売られている。しかし、ファーウェイの728ドル(約7万9000円)のMate 20 Xは4カメラを装備し、画質はXR以上だ。

同じく中国のOPPOのFind Xも728ドル程度の価格ながら、ノッチのないベゼルレスのスクリーンを搭載し、筐体の上部からカメラが飛び出す画期的なギミックを盛り込んだ。つまり、iPhoneは高価な割に、それに見合うイノベーションが欠如しているのだ。

カウンターポイントのJames Yanは、「ハード面のイノベーションのギャップは、今後さらに拡大する」と指摘する。中国メーカーらは、5G対応モデルの製造でしのぎを削り、接続スピードの速さをアピールしようとしている。また、折りたたみ式ディスプレイのような新たなアイデアを積極的に取り入れ、製品に新たなバリューを加え、プレミアムメーカーにのしあがろうとしている。

iPhoneは「高級ブランド」と化した

「アップルの2019年の中国での売上は、さらに低下するだろう」とYanは述べた。

アップルのブランド価値が、中国で完全に損なわれたわけではない。しかし、iPhoneはもはや一般的なコンシューマープロダクトではなく、グッチやルイ・ヴィンなどの高級ブランドカテゴリの製品となった。このようなニッチな製品で、出荷台数を維持することは難しい。

「iPhone XS Maxはたしかに優れたデバイスかもしれない。しかし、マス向けの製品とは呼べない」とカナリスのJiaは述べた。「アップルは中国の中価格帯のスマホ市場で、ポジションを失った。これは、今後の同社の売上に非常に大きな打撃を与えることになる」

編集=上田裕資

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