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2019.01.16

人がお金に屈しない世界へ──仮想通貨に希望を託す起業家 森川夢佑斗の過去と未来 #NEXT_U30

GincoのCEO 森川夢佑斗




──C2Cは、人々の経済活動にどのような影響を与えるのでしょうか。

生きることって、働いて、お金をもらって、それを使って、また働いて、という繰り返しなんですよ。フロー型の経済で、資産がストックされないんです。とはいえ、土地やマンションなどの金融資産を持ちましょう、となるとハードルが高いですよね。

でも実は、C2Cは、自分が持っている物を金融資産に変えているという見方もできます。Airbnbで家を貸したり、メルカリで物を売ったりするのは、体験としてはイージーだけど、本質的には資産運用に近い行為。それがすごく面白かったんですね。

──誰もが日常的な消費に、資産運用の観点を含めることができる、ということですね。


そうなんです。そうするとうまく社会にお金が循環して、結果的に消費できる物の数や、選び取れるサービスの選択肢が増えるので、個人の生活水準は向上していきます。そういった仕組みを作っていく中で、ブロックチェーンがとても重要なんです。これまで資産化できなかったものを、デジタル上で管理できて、流動性を高めることができる。金融的な意思決定をするためのハードルを極端に下げることができるんですよ。

いま、仮想通貨を持っている人が全員株式投資しているわけではないですよね。手軽に見えるのがいいんです。この技術がさらに拡張していけば、信用や評価といったものも資産として取り扱えるようになります。例えば、社会的に良い行いを重ねることで信頼が付与されるようになっていくイメージです。お金で測れなかったものにも価値がついてくる。

──なるほど。Airbnbでは、評価の高いユーザーが優遇されるような仕組みが実装されている例もありますね。

そうですね。資本主義社会の尺度の中で軽視されがちでも、本当は大事なことがたくさんあります。社会的な良い行いをしても、別にお金にならないから意味がない、みたいなことを考える人って少なくないですよね。そこに明確なメリットを生むことで、社会を良い方へ導くシステムになるんじゃないか、と思っていて。

──以前、WIREDの記事に、サイコパスほど給料がいいという話がありました。そういう状況を逆転させることができるかもしれません。

金融マーケットで利幅をあげようと思ったら、中身が何であろうと安く買ったものを誰かに高く売りつけることが正義になる。邪悪な面もあるんです。ビットコインは、そういったマネーゲームに対するアンチテーゼでもありました。もっとオープンでクリアな金融マーケットになればいいと思っています。

お金がハードルになることって、たくさんあると思うんですよ。日本は労働人口も減っているし、若年層の貧困は、今後大きな問題になる。そこに対するソリューションを提供したいという思いもありますね。先程言ったフローからストックへ、という考えもその一環ですね。そもそもお金の悩みは人間的な悩みではない、と思っています。お金は人間が生みだしたもの。自分たちが生み出したものに囚われ過ぎている状態を改善したいんです。

──具体的に、どういった方法が実装されているのでしょうか。

一番わかりやすいのが、創造的な活動にたいしてのリワードだと思います。『steemit』というプラットフォームがあって、記事を書くとトークンがもらえて、トップだと一記事で20万円くらいの収入を生んでいます。

相場よりずいぶん高いですが、そもそもライティングというものの価値は本来もっと高くあってもいい。人間にしかできないことの価値が下がっているということがあると思うんですよ。

音楽とか芸術もそうですね。貨幣経済とは別の評価軸に基づく経済圏をつくることによって、クリエイターに価値が貯まっていく、という現象が起きるとも考えられます。
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文=長嶋太陽 写真=今井駿介

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