ロイター通信が2007年に実施した調査によれば、新年の抱負を数週間以内に諦める人は全体の77%に上る。認知心理学者のスペンサー・ジェロルによると、その大きな理由の一つに、新年の抱負に期待するがあまり、高い目標を設定してしまうことがある。
最先端の神経科学ツールを使いオーディエンスのエンゲージメントを計測するスパーク・ニューロ(SPARK Neuro)の最高経営責任者(CEO)であるジェロルは、人間がどのように考え、感じ、決断し、行動するかを研究している。
ジェロルいわく、「この時期は、自分の目標について語ることが社会的に受け入れられ、大きな夢を見ることが文化的に期待されている」ため、脳が刺激されてこうした目標が頭の中で中心的な地位を得る。新年の抱負を設定すると、ドーパミン作動性報酬系(眼窩前頭皮質と腹内前頭葉前部皮質)が活発化するのだという。ここで課題となるのが、脳の刺激を保ち、長期的に目標に集中させることだ。
ジェロルによれば、努力の持続をさらに難しくしているのが、ドーパミン作動性報酬系(目標を達成したいという最初の感情を生んだ部位)が「強化学習」に影響を受けやすいという事実だ。
つまり、以前に楽しいことや満足感の得られることを経験していると、再度その行為をしやすくなる。そのため、ネットフリックスでドラマを一気観したり、SNSをチェックしたりといった特定の習慣があると、その習慣を続けてしまいがちであり、これはたいていの場合、新年の抱負には役に立たない。
では、どうしたら新年の抱負を実行できるだろう? 一般的に、目標は達成可能かつチャレンジのしがいがあるものであるべきとされる。これには一理あるが、それだけでは足りない。私たちは自分の意志の力や根性に頼りがちだが、こうした要素も重要な一方で、目標を実際に達成するには他に必要なことがある。