レディー・ガガ主演映画「スター誕生」と米国音楽業界の現実


2011年の受賞者エスペランサ・スポルディングは、候補になった時点で2枚のアルバムをリリース済みだった。ちなみにこの年の他の候補者は、2009年にデビューEP「My World」を大ヒットさせたジャスティン・ビーバーと、2006年からミックステープを発表し続けていたドレイクらである。

2018年の受賞者アレッシア・カーラも、YouTubeでの活躍を経て2014年にメジャーレーベルと契約し、2015年にファーストアルバムをリリース。2016年にカナダ最大の音楽賞の新人賞を受賞するなど、徐々に知名度を高めた上での受賞だった。

このようにある程度のキャリアを持つアーティストを「新人」にカテゴライズすることについては反対の声もあり、グラミー賞を主催するナショナル・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンス(NARAS)は最近、ノミネートの条件を新たに公表した。

ビルボードの報道によると、選考時点までにリリースした曲数が5曲(またはアルバム1枚)以上、30曲(またはアルバム3枚)未満のアーティストが最優秀新人賞の対象となるという。この変更により、従来のルールでは2019年の同賞にノミネートされていた可能性が高いカーディ・Bやポスト・マローンらは候補から外れた。

実はレディー・ガガも、NARASの複雑な選定基準のせいで最優秀新人賞を逃した一人である。レディー・ガガは2009年最も活躍した新人アーティストであったにもかかわらず、デビューシングル「Just Dance」が前年の最優秀ダンス・レコーディング賞にノミネートされていたため、最優秀新人賞の対象外となった(翌年からNARASはデビューアルバムに先行してリリースされたシングルがノミネートされた者も対象に含むようになった)。

もっとも映画は虚構の世界である。物語を2時間10数分に収めるために、時の経過を短縮するのは演出の一環と言えるだろう。レディー・ガガにとっても、アリーとして最優秀新人賞を受賞する瞬間は感慨深いものがあったのではないだろうか。

編集=上田裕資

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