レディー・ガガ主演映画「スター誕生」と米国音楽業界の現実

レディー・ガガ(Photo credit should read Wiktor Szymanowicz / Barcroft Media via Getty Images)

バーで歌う女性が世界的人気を誇るベテランミュージシャンにその才能を見出され、スターへの階段を駆け上がっていく──。ハリウッド映画「スタア誕生」の4度目のリメイクとなる「アリー/スター誕生」が、全米公開から2カ月以上経ったいまも話題を呼んでいる。

自身もスーパースターであるレディー・ガガがヒロインのアリーを演じ、「アメリカン・スナイパー」のブラッドリー・クーパーがアリーを業界に引き入れるジャック役と監督・脚本・製作を務めたこの作品は、現代の音楽業界を舞台にした恋愛映画。

主演二人の演技は映画批評家から絶賛されており、これから数々の映画賞にノミネートされるのは確実だ。さらに楽曲のクオリティも申し分なく、サウンドトラックはビルボード200アルバムチャートで3週連続1位を記録、12月22日時点でも4位をキープしていた。

このように各方面で評価の高い同作だが、音楽業界の現状と乖離している点が一つある。それは劇中でアリーがグラミー賞の最優秀新人賞を獲るスピードだ。

物語はジャックがバーでアリーの歌声に惚れ込むところから始まる。後日、ジャックはアリーを自分のコンサートに呼んでリハーサルなしに「Shallow」をデュエットし、その様子がインターネットで拡散されたことで、アリーは一躍注目を浴びる。ジャックのツアーに同行するようになったアリーは、やがてレコード会社と契約し、シングル曲をヒットさせ、「サタデー・ナイト・ライブ」に音楽ゲストとして出演する。

ここまでの展開はそれほど非現実的ではない。人気テレビ番組への出演は、もう少しキャリアを積んでからのことが多いとはいえ、楽曲がアーティストの名前よりも先に有名になるケースや、音楽プロデューサーが一部で話題になっているアーティストを青田買いするケースはよく見られる。

ただし、アリーが注目されてからおそらく1年もしないうちにグラミー賞の最優秀新人賞にノミネートされる展開は現実にはありえない。名称こそ「新人賞」だが、実際のグラミー賞最優秀新人賞はデビューから2年以上経ったアーティストが受賞しているのが現状だ。

デビューから数年で「新人」の場合も

たとえば2010年に新人賞を受賞したカントリーバンドのザック・ブラウン・バンドは、メジャーデビューこそ2008年だが、出世作のファーストシングル「Chicken Fried」はインディーズ時代から演奏していた曲であり、オリジナルバージョンは2004年のアルバムに収録されている。
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編集=上田裕資

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