増大する「長生きリスク」、私たちは備えることができるか?

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私はずっと以前から、人口構造の変化によって社会保障制度は持続不可能なものになったと警告してきた。

米国では1940年には、年金受給者1人を159.4人の労働者が支えていた。この比率は1945年には41.9人にまで低下し、その10年後には一桁台になった。

一般的には、現在のこの比率の低下はベビーブーマーが65歳になったためと考えられている。その影響は大きい。だが、それと同様に、あるいはそれ以上に重要なのは、平均寿命が伸びていることだ。

私たちの寿命が延びたことは、年金受給者とそれを支える労働者の比率(年金扶養比率)を低下させる。より多くの人がより長期間にわたって、年金を受給することになるためだ。

定年退職の「問題点」

産業革命が起きると同時に「定年退職」という考えが広まったのは、偶然ではない。技術の発展により、食料生産はそれまでほど労働集約型ではなくなった。それにより、生産性が低下する高齢者の貢献をあまり必要としなくなったのだ。

また、定年退職制度が作られたときには誰も、人生の30~35%の期間を社会の費用負担によって生きることが一般的になるとは思っていなかった。

米国の問題は、単純にベビーブーマーの人口が非常に多いということではない。彼らがそれ以前の世代の人たちよりも、長生きするということだ。

長寿社会

1950年には、人口に占める65歳以上と80歳以上の高齢者の割合は、それぞれ8.4%、1.2%だった。2000年には、65歳以上の割合は人口の12.3%になった。さらに、これまでに示されている予測が正しければ、2050年には65歳以上と80歳以上の人たちの割合は、22.3%、8.3%になる。

ただし、この推計は恐らく誤っているだろう。10年後までには寿命をさらに延ばすことになる技術が登場すると考えられるが、その影響が加味されていないからだ。今後、最も必要になると考えられるのは、「生産年齢」の上限を引き上げることだ。

平均寿命の伸びと健康状態の改善を受け、定年年齢はもう何年も前に70歳以上に引き上げられているべきだった。それを計画するための時間はあったはずだ。だが、それは実行されなかった。そして私たちは今、解決策を見つけるために力を尽くさなければならない。
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編集 = 木内涼子

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