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ニューヨーク在住ジャーナリスト / NYC-based Journalist

イラストレーション=山崎正夫

IT革命とグローバル化を描いた『フラット化する世界』の出版から13年。ニューヨーク・タイムズのピュリツァー賞受賞コラムニスト、トーマス・フリードマンは今、世界をどう見ているのか。

近著『遅刻してくれて、ありがとう─常識が通じない時代の生き方』には、待ち合わせの相手が遅刻してくると、立ち止まって考える時間ができるから有り難い、という意味が込められている。企業が、加速する変化の時代を生き抜くカギは何か。フリードマンに話を聞いた。


──『フラット化する世界』は日本でも大きな注目を集め、今春には『遅刻してくれて、ありがとう』の邦訳版も刊行されました。経済、および企業環境など、世界はどのように変わっていると思われますか。

私たちは、3つの「加速」のさなかにいる。まず、地球温暖化や生物多様性の消滅など、「母なる自然」を取り巻く加速だ。次がグローバル化の加速である。従来の貿易にとどまらず、デジタルによるグローバル化だ。最後が「ムーアの法則」の加速である。半導体の集積密度が(1年半ごとに)倍増し、コンピュータの処理能力が加速することだ。

この3つが組み合わさることで、ビジネス環境が様変わりし、どの企業も、人工知能(AI)を使い、膨大なデータを分析し、いかなることも予測解析できるようになった。この3つの加速がわかっていないと、繁栄・成功できない。

──『遅刻してくれて、ありがとう』では、何を訴えたかったのでしょう?

世界が速く変化するようになればなるほど、古く、ゆったりとしたものが、かつてないほど大切になってくるということだ。重要なのは、上手な子育てや良き教師であることなど、昔ながらのやり方を(人から人へ)アップロードして伝えるべき事柄だ。変化が速い今だからこそ、しっかりした価値観・原理が重要さを増す。抑制と均衡の効いた社風・道徳的文化・制度が大切だ。

──本のなかで、「一時停止ボタンを押すと、機械は止まるが、人間はスタートする」といった趣旨の言葉が引用されています。あなたの友人で米IT企業LRNの創業者、ダヴ・サイドマン氏の言葉だそうですが、エクスポネンシャル(飛躍的)な変化の時代にあって、立ち止まれば負けると考える経営者が多いのでは?

そうかもしれない。だが、減速することで熟考し、良き価値観や優れたリーダーシップなど、本当に重要な事柄と再びつながることができる。一時停止し、大切なことをじっくり考えることが大きな意味を持つ。

多くのテクノロジーの専門家に取材したが、私の師であるダヴ・サイドマンはキーパーソンの一人だ。(『ザ・セカンド・マシン・エイジ』などの共著者)アンドリュー・マカフィーとエリック・ブリニョルフソン、“X”を率いるアストロ・テラーも大切な師だ(注:“X”は、グーグルの持ち株会社、アルファベットの研究開発部門)。

というのも、彼らは、気候変動やグローバル化、テクノロジーによる多次元の変化を見通せるからだ。本でも触れたが、国防総合大学で戦略を教えるリン・ウェルズいわく、物事は「ボックス(枠)」内で考えるべきではなく、枠の外でもダメだ。枠を外して考えるべきだという。大切なのは枠に捉われず、母なる自然やグローバル化、テクノロジーを連動させて考えることだ。

編集=フォーブス ジャパン編集部 インタビュー=肥田美佐子

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