日本は「マザーズ」という市場があることから、時価総額が数十億円の段階で上場可能だ。いわゆる、「スモールIPO」を目指すスタートアップが多く、それが結果的に日本からメガベンチャーを生み出せない要因のひとつになっていた。
事実、アメリカの調査機関が発表した、世界220社のユニコーンの内訳を見ると、ほとんどがアメリカもしくは中国の企業。アメリカは109社で全体の49.5%を占め、中国は59社で全体の26.8%を占めている。
日本のユニコーン企業は過去、DMM.com、メルカリ、プリファードネットワークス(PFN)の3社しかいないと言われている。
政府が閣議決定し、新たな成長戦略として掲げた目標「2023年までに20社のユニコーンを創出する」を達成するには、メルカリのような企業をどれだけ多く生み出せるか、が大事になってくるだろう。
メルカリ上場後のスタートアップ・エコシステムについて、投資家たちはどう考えているのか。今回、話を伺ったのはメルカリにも投資し、2018年のForbes JAPAN「日本版MIIDAS LIST(日本で最も影響力のある投資家ランキング)」で1位に輝いたグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)の高宮慎一。
「勝ち組と負け組の格差が広がり、二極化が進んでいく」とポスト・メルカリ時代について語る高宮。彼が考えるメルカリ登場前、登場後のスタートアップ業界とは──。
インターネットの残り香と新技術の萌芽に両張りする時代がくる
1990年代に新しいテクノロジーとして投資を集めた「IT」が、どんどん小慣れて成熟化してきている。IT領域に残されたフロンティアはどこか。僕が注目しているのは「濃いコミュニティ」とインダストリー・トランスフォーメーション的に「リアルに染み出すIT」という2つの領域です。
「リアルに染み出すIT」の領域でビジネスを展開し、大成功を収めているのがラクスルです。今後、ラクスルのようなビジネスを展開している企業には大きなチャンスが眠っていると思います。もうひとつの「濃いコミュニティ」の領域は、iStyleや@cosme、クックパッドはまさに既に実現したその成功例で、女性のコスメや料理に特化したバーティカルメディアでありながら、特化した先のニッチが、マスとニアリーイコールな偉大なるニッチなのです。