この背景には地震多発地帯であるアラスカが、地震に対する徹底した備えを行っていたことがあげられる。
1964年には米国史上最大とされる地震がアラスカ州を襲っていた。地震の規模はマグネチュード8.3から9.2とされているが、あまりにも強い地震だったため、正確なデータは残っていない。この揺れで膨大な数の家屋が倒壊し、津波も発生。合計139名が亡くなっていた。
この地震はアラスカ地震(The Great Alaskan Earthquake)として知られるが、発生したのが、キリスト教の聖金曜日だったため聖金曜日地震(Good Friday Earthquake)とも呼ばれている。この大地震の教訓を活かし、アラスカ州では全米で最も厳しい建築基準が採用された。
現在、アラスカ州は耐震性の面で最も優れた基準とされる、IBC(International Building Code)を採用している。IBCは地形や過去の地震記録から考えて、最大の揺れに耐える建築設計を求めている。外壁はコンクリートで強固に硬められ、屋根には軽い素材を用いることで、揺れを少なくする構造をとっている。また、水のパイプや電気設備のワイアーは、壁の内部ではなく外壁を走らせ、地震による被害を軽減している。
また、道路の橋には揺れを吸収するダンパーが装備され、地震でも壊れない設計になっている。11月の地震では震源から約190キロメートルの地域にある、石油パイプラインへの被害も懸念されたが、特別な装備を施していたため、何のダメージも受けていなかった。
アラスカは地震活動が極めて活発な地域にあり、年間で4万件近い地震が発生している。これは、アラスカ以外の米国49州の発生件数の合計よりも多い数だ。