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東京エレクトロン代表取締役社長・CEOの河合利樹

右肩上がりの成長を続ける半導体製造装置業界で、世界第3位の規模を誇る東京エレクトロン。雲ひとつない青空のような河合のポジティブ思考が描き出す“目的地”とは?


「雲ひとつない青空」

これが東京エレクトロン代表取締役社長・CEO、河合利樹の現状認識だ。

半導体製造装置業界で世界第3位の同社は、河合が社長に就任した2016年1月以降、右肩上がりの成長を続けている。直近の18年5月末に発表された新中期経営計画では、「2020年度(21年3月期)をめどに、市場規模に応じて売上高を最大1.5倍(17年度実績比)の1.7兆円にまで高める」と強気の目標を掲げた。

好業績の背景にあるのはWFE(Wafer Fab Equipment=前工程製造装置)市場の活況だ。同社は20年度の市場規模を最大620億ドルと想定。今後も一段と成長が続くと見通している。

ここまで明るい未来を描き、成長を続けられる原動力は何なのか。東京・赤坂にある本社を訪ねると、河合は都内を一望できるビルの最上階でこう語った。

「半導体製造装置業界は技術革新が早く、変化も激しいのが特徴です。そのため経営を行なうにあたっては、枝葉ではなく森を見たいと考えています。まずは全体像を見て、しっかりと先の目的地であるマイルストーンを定める。ただ闇雲に進むのではなく、常に強いネクストジェネレーションプロダクトを持ちながら進んでいくことが重要です」

そんな河合が定める“目的地”とはどこなのか。それを問うと、すぐに迷いのない答えが返ってきた。

「経営者はオンリーワン、ナンバーワンを目指さなければなりません。幸いなことに、弊社には素晴らしく優秀な社員たちがいます。その彼らに、世の中にないもの、新しいものをどんどん創出していこう、世界ナンバーワンの価値を提供していこうと伝えています」

河合は自らを「もともと楽観的な性格」だと評する。「細かいことを気にすることもあるけれど、切り替えは早いほうだと思う」とも言う。しかし、経営における河合のポジティブ思考は、もちろん単なる楽観主義からくるものではない。業界を生き抜いてきた河合なりの方程式に、さまざまな要素を代入した結果だ。

「半導体業界を引っ張ってきたのは、1990年代まではPC、2000年代はスマホでした。そしていま、私たちは時代の転換点にいます。IoTですべてがつながり、ビッグデータが価値を生む時代がやってきました。その裏付けとしてCISCOも、世界のデータ通信量は、今後平均年率27%のスピードで拡大していくと予想しています」

ますます半導体の需要は拡大

そのときに必要となるのが、グーグルやアマゾンなどの大企業が大量のデータを処理するハイパースケールデータセンターだ。CISCOが発表したデータによると、16年時点で世界に338拠点存在したハイパースケールデータセンターは、21年には2倍近い628拠点にまで拡大すると予測されている。

「そのデータセンターの中枢を占めるのがサーバーです。サーバー用SSDの基幹部品である3次元NAND型メモリの需要は増大しています。しかも、デバイスは劣化していくため、5年に一度は入れ替え需要が発生します。これはすごいことなんです」

河合はそう言って目を輝かせた。

今後はスマート医療、AI、自動運転、スマートファクトリーなど、半導体の需要はますます高まることが予想されている。特に自動運転の場合には、情報の遅延は許されない。そのため、クラウドですべてを賄うのではなく、現場の近くでリアルタイムにデータを処理できるエッジコンピューティングのエリアも拡大していくことになる。

「ますます大容量で信頼性の高い、省エネルギーなデバイスが求められます。これだけ多くの需要があり、同時に技術革新が求められる時代には、弊社の経験とリソースが力を発揮するでしょう。お客様との信頼関係は、強みであり、今後ももっと伸ばしていけると考えています」

文=畠山理仁 写真=ピーター・ステンバー

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