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日本と世界の「教育のこれから」

(c)UWC ISAK Japan

私が尊敬するある経営者は、いつも「成功は、時に、嘘の友だちと本物の敵を作る。失敗は、成功のための経験と、本物の仲間を生む」と言っている。そして私は、それは教育現場でこそ体験すべきことだと考えている。

いまや多くの教育現場で、先生たちはモンスターペアレンツに慄き、昨今では訴訟リスクにも怯えながら、なかなか生徒にリスクを取らせること、失敗を経験させること、が難しくなりつつある。しかしそれでは、生徒たちの成長に学校がキャップ(蓋)をしているようなものである。

私が代表理事を務めるユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパンでは、生徒の内側から沸き起こる情熱や義憤から、高校3年間を通じてプロジェクトを創り出すことを後押しするプログラムを行っている。小さな成功体験と同時に、失敗も体験してもらうためのこの試みだ。今回はこのプログラムから、生徒たちがいかに学んでいるかをご紹介することで、改めて「失敗力」について考えてみたい。

「失敗が怖くなくなったので、起業します」

二期生の男子A君は、入学当初からチャンレジが大好きだった。「身の回りの課題の解決」がテーマだった1年生のプロジェクトウィークでは、彼のチームは地元、中軽井沢の観光をもっと盛り上げたいということで、観光客へのヒアリングなどを重ねた末、中軽井沢駅前に「足湯」をオープンすることを企画する。

ところが温泉を掘ることは当然それほど簡単ではなく、免許や周辺温泉からの許可が必要で、難航。結局、夏だから「足水」でいくというアイデアで決着し、ようやく待ちに待った開業日を迎える。

ところが、その週末のお客さんは10人足らず。月曜にキャンパスで彼を見かけ、さぞかし落ち込んでいるだろうと思って声をかけると、「りんさん、大失敗でした! でも原因を分析したんですよ、4つあってですね……」と、一切うなだれた様子がない。

これには私もさすがに驚いたが(苦笑)、彼は在学中、この調子で様々なチャレンジを繰り返し、卒業式では「もうたくさん失敗したので、失敗もリスクも怖くない。起業します」と宣言して、同級生数名を誘って、半年前に言葉通り起業した。



起業に際して開発したマーケティングアプリは、オフラインで友達を誘い合わせて使うとポイントが増え、加盟店舗側もオンラインで一人一人マーケティングするよりはコストが抑えられるというアイデア。既にシードの資金調達も終わったとのこと。事業はまだまだ試行錯誤を重ねている最中だが、これまでの失敗が彼のリスクテイク力を上げているのは間違いない(彼の名誉のために追記すると、在学中は失敗だけではなく、高校生起業家講座のビジネスコンペで入賞するなどの成功もしている)。

文=小林りん 写真=UWC ISAK Japan

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