その一つにあげられるのが、映画「ゼロ・グラビティ」で知られる、アルフォンソ・キュアロン監督の最新作「ROMA ローマ」だ。この作品は1970年代のメキシコシティを舞台に、中流家庭の波乱に満ちた1年を描いた作品。既にベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞しており、批評家の評価も非常に高い。
「ROMA ローマ」は11月21日からニューヨークとLA、メキシコの映画館で放映される。この作品のネットフリックスでの配信開始は12月14日に予定されている。
また、コーエン兄弟の最新作「バスターのバラード」も、ニューヨークとLA、サンフランシスコとロンドンの4劇場で公開された後、11月16日から配信開始となっている。
ネットフリックスがアカデミー賞の最優秀作品賞を狙うのは、モノクロで撮影された「ROMA ローマ」だと思われる。クリスマス前の劇場で客の入りは期待できないため、彼らは劇場から利益をあげることを全く期待していない。
映画業界では、劇場公開されていない作品に賞を与えない傾向があり、賞取りレースに参加するためにネットフリックスは映画館での公開を行うのだ。仮に「ROMA ローマ」がアカデミー賞を受賞すれば、強力なプロモーション効果が見込める。
ネットフリックスはまた、「未来を生きる君たちへ」でアカデミー賞を受賞した、デンマーク出身のスサンネ・ビア監督の新作「バード・ボックス」も12月に劇場で上映する。さらに、2019年に配信予定のマーティン・スコセッシ監督の新作「ジ・アイリッシュマン」も、一部の劇場で先行上映されることが予測される。
しかし、劇場での動員数はストリーミングと比較するとわずかな数字にとどまるだろう。今年7月22日に公開された、ポール・グリーングラス監督が極右思想のテロリストを描いた映画「22ジュライ」は、配信から3週間で世界1450万人に視聴されたと報道されている。