ギグエコノミーの労働者が直面する5つの問題

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単発や短期の仕事(ギグ)を基盤とした「ギグエコノミー」は、雇用主側だけでなく、これまでと違う働き方を求める個人によっても推進されているという事実については、驚く人もいるかもしれない。マッキンゼーの調査によれば、米国と欧州連合(EU)各国では約6400万人が、必要に迫られてではなく自らの選択で、本業に加えてこうしたギグワークを請け負っている。

しかし、ギグワークは「自分が情熱を注ぐプロジェクト」と等しいわけではない。ギグワークにも「仕事」の側面は残っており、ギグエコノミーの世界で働く人々は次のような困難に直面することとなる。

1. アイデンティティーの確立がしにくい

職業は自分という人間を形作る大きな要素だ。初対面の人ばかりの集まりでは必ず、「ご職業は?」という質問をされる。これまでであれば、エンジニア、会計士、教師など、一つの職業を答えるだけでよかったし、雇用主も一つだった。

しかし今のギグエコノミーの労働者は、「雇用」先も仕事の種類も複数ある。自分はフリーランスのライター兼ミュージシャンで、カフェを共同経営しつつ手作りジュエリーを販売している、という人も珍しくない。

古い考えの人間はこれを理解できず、こうした働き方をする人々を集中力が無く未熟で「自分探し」の途中だと批判しがちだ。「私は一体何者なのか?」という疑問が浮かぶのも仕方ないことだ。ただその答えは、そういったすべてのものがあなたという人間を作っているのであり、それで構わないのだ。

2. 雇用面でのグレーゾーン

ギグエコノミーには法的な疑問も伴う。フリーランスでギグワークをする人は、どんな時に独立業務請負人となり、どんな時に請負元の従業員だとみなされるのか。

良い例がウーバーだ。ウーバーの運転手は独立業務請負人だとみなされる一方で、支払額は会社が定める。また、運転手には労災補償や社会保障の会社負担分などの福利厚生がない。

ギグワーカーの雇用面での立場は多くの場合はっきりしておらず、各地の立法府の中にはこの新たな働き方を定義し、どんな社会保障を受けられるか決めようとする動きすらある。

この問題が将来的にどう解決されるのかは不透明だが、現時点では自分自身がセーフティーネットとならなければいけないと理解しておくこと。この状況は不安な気持ちになる上、費用の問題も出てくるだろう。
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編集=遠藤宗生

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