ダッチブロス(Dutch Bros)は先月、食品・飲料関連の複数の事業に出資している投資会社、米TSGコンシューマー・パートナーズに過半数未満の株式を売却したと発表した。これによる具体的な調達額は明らかにされていないが、店舗数を5年後までに、現在の約300から3倍近い800程度にまで増やしたい考えを示している。
オレゴン州グランツパスに拠点を置くダッチブロスは、ドライブスルーのコーヒーショップを運営する米国の非公開会社では最大の規模。7州に店舗を構え、従業員数は9000人を超える。
業界誌「レストラン・ビジネス」に掲載された食品業界専門の調査会社、テクノミックのデータによれば、ダッチブロスの2017年の売上高は、前年比8.5%の約2億3570万ドル(約267億円)に上っている。
多様な米国のコーヒーチェーン
米国のコーヒーショップ市場では、他社の間でもさまざまな動きがみられる。ダンキンドーナツは9月末、ドリンク類の販売に注力する方針の一環として、社名を「ダンキン(Dunkin’)」に変更する計画を発表。
コーヒーチェーン最大手のスターバックスは、「ナイトロ コールドブリュー コーヒー」の販売に力を入れるほか、ドライブスルーの利用客の増加を目指す考えを明らかにしている。
ダッチブロスには、大手のコーヒーチェーンよりもフレンドリーな雰囲気がある。順番を待つ車の列が長くなると、従業員がタブレットを手に外へ出て、1台ずつ注文を取ってくれる。買ったものが好みに合わなければ、別の商品との交換にも応じてくれる。
オンラインでは袋入りやシングルサーブ・タイプのコーヒーを販売しているほか、幅広いデザインのTシャツやコーヒーボトルも扱っている。
地域社会を重視
ダッチブロスはオランダからの移民を祖先に持つデーンとトラビスのボーズマ兄弟が1992年に創業した。一家は3世代にわたって酪農場を経営していたが、当時までに規模の縮小を余儀なくされていた。
兄弟は当初、エスプレッソマシーン1台とコーヒー豆およそ45kg、プッシュカートを購入。自分たちのコーヒーに関心を持ってもらおうと、試飲用のコーヒーを無料で配った。同社の店舗では現在も、年間100万杯以上を無料で提供している。1996年までに店舗を6カ所に増やし、その後フランチャイズ化した。
デーンは筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリッグ病)での4年間の闘病生活を送った後、2009年に死去。ダッチブロスはその後、毎年およそ580万ドルを地元の慈善団体やその他の非営利団体に寄付している。
最高経営責任者(CEO)のトラビスは発表文で、「TSGはわが社のビジョンを理解し、わが社特有の文化と、従業員と顧客、地域社会への貢献を高く評価してくれている。われわれは事業の成長と拡大に関する野心的な目標を設定した。わが社は(TSGからの出資によって)このほど得た推進力に基づき、可能な限り最も戦略的に前進していく。TSGがそれを支援してくれると確信している」と述べている。