VRが拓くリモートワークの未来
ユーザーの用途が変われば、使うメディアも変わってくる。ビジネスであればノートパソコンやモバイル端末、日常生活であればスマートフォン。ギャラガーは「最近は、特に建設業界や不動産業界からの関心が高まっている」と語る。
「職場のノートパソコンで調査や設計、事務作業をすることもあれば、現場でモバイル端末を使うこともあります。チーム間のコミュニケーションでも、モバイルとデスクトップを行き来する訳です。そうした実際の使われ方を念頭に開発を進める必要がありますね」
Trelloは11年の開発当初からあらゆるインターフェースに対応することを想定していたという。とはいえ、不発に終わったアプリもある、とプライアーも認める。例えば、アマゾン「Kindle」やアップル「Watch」用のアプリもかつてはあったが開発を中止したという。
「Watchはプッシュ通知を目的に使っている人が多いことがわかりました。なので、わざわざ全機能が使えるほどに開発を進める必要はないな、と。ユーザーがどこで仕事し、どのようなデバイスを使ってコラボレーションをしているか、見極めながら開発を続けることでしょう」
その中には、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)開発もあるのだろうか?
プライアーとギャラガーは「具体的な計画はない」と明言しつつも、フェイスブックが開発したVR端末「オキュラスGO」を2人で試す機会があったと明かす。それぞれの自宅にいながら、アバター(ユーザーの分身であるキャラクター)を介しての会話は「別々の場所にいるのを忘れるほどにリアルだった」と語る。ビデオ会議や電話会議だと、その質ゆえにほとんど音声を通じて相手を認識するようなものだが、VRならばその“距離感”を縮め、リモートワークを新しい次元へ推し進めるのではないか、とギャラガーは話す。
「現在のリモートワークでは、相手の気持ちや考えなど、人情の機微を感じ取るのが難しいですが、ARやVRならば、異なる場所にいながら一緒に働いている感覚を持つことができます。試行錯誤しつつも、いずれ最適解が生まれるでしょう。コラボレーションツール開発企業で働く者としては心踊る領域ですね」
プライアーもVRとコラボレーションツールの相性の良さについて同意する。
「時間はかかるかもしれませんが、VRもいずれ現実世界と変わらないレベルになるのではないでしょうか。リアルな会議室の代わりに、“バーチャル会議室”で打ち合わせをする─。リモートワークで使われているコラボレーションツールが、VRの世界でも使われるようになったら、世界は大きく変わると思いますよ」