同団体のキャリア訓練は、食品業界以外にも応用可能なものにすることを目指しており、参加者には学習と成長のための安全な場を提供する。フリーダム・ア・ラ・カートは参加者に対し、地域のバス路線の案内やアパートを見つけること、地域の支援サービスへのアクセスなどを支援し、生活面でのスキルも提供している。
「心的外傷について情報が与えられない状況では、仕事で同僚や顧客と口論になり、解雇されてしまって一からやり直しになることがよくある」とヘインズ。「フリーダム・ア・ラ・カートでこうしたことが起きれば、何が根本原因なのかを見極めるべく座って話し合う」
自身も人身売買の被害者であるエープリル・サッカーは、同団体で昇進を重ね、現在はケースマネジャーとして働いている。彼女の役割は、同団体がサービスを提供する女性たちをあらゆる面で支援することだ。運転免許の取得に連れて行ったり、アパートにカーテンを取り付けるのを手伝ったり……。食事の計画や食料品の買い出しなど、毎日の仕事においても多くの女性たちを指導してきた。
サッカーは、5年前にフリーダム・ア・ラ・カートの2年間の訓練プログラムに登録した。前科があり、履歴書の職歴に大きな空白があった彼女は「仕事は見つけられなかった。フリーダムは、誰も仕事をくれない中で、私に仕事をくれた」と話す。
それからサッカーは地元の地域短期大学で準学士の学位を取得し、現在は学士を取得中だ。今では家を購入し、車も持っている。禁酒を始めてから8年目を迎えた。
「フリーダム・ア・ラ・カートがなければ、私は現在のような状況にいないと心から思う。成功するための決意はあったが、今の状況とはとても違っていただろう。この団体は、私に、世の中で苦しむ他の女性たちを支援する機会をくれた」。サッカーは路上での生活に触れ、こう話した。
それではなぜ、フリーダムは性目的の人身売買の被害者を癒やし指導するため食品ビジネスを活用しているのだろうか? ヘインズは「こうした人たちにぴったりなことだから」と熱意を込めて語る。
「多くの女性は、キッチンで母親や祖母、いとこやおばと料理をして過ごした経験がある。これこそ、世界のあらゆる問題を解決するところ。キッチンこそ、私たちが互いに支え合い、絆を結ぶところ。私たちは、その環境をここで作り上げている」とヘインズは言う。
「ここはおいしい食べ物を作るだけでなく、問題について話し合い、考えていることを共有する“安全な場所”なのだ」