仮にアップルがトランプの意見を受け入れた場合、台湾の受託生産メーカーのうち、少なくとも12社が影響を受けるとアナリストらは分析している。大手サプライヤーは、アップルとの契約を維持するために、現在中国にある生産拠点を台湾や米国に移転したり、オートメーションによるコスト削減を図ることを迫られるだろう。
「スマートフォンに追加関税が課せられた場合、受託生産メーカーは対応を迫られる」と台湾の調査会社「WitsView 」のBoyce Fanは話す。影響を受ける台湾企業には、「鴻海精密工業(Foxconn Technology)」や「ペガトロン(Pegatron)」のほか、カメラレンズを製造する「大立光電(Largan Precision)」、タッチパネルのサプライヤーである「宸鴻科技集団(TPK Holding)」が含まれる。中国や日本、韓国のサプライヤーらもアップルからの受注減少は心配だ。
台湾のメーカーにとってアップルは最重要顧客だ。鴻海やペガトロン、「ウィストロン(Wistron)」は中国に生産拠点を構えており、中国から米国に輸出した製品は制裁関税の対象になってしまう。
アップルは、トランプ政権が中国からの輸入品に追加関税を発動すれば、一部の製品を値上げせざるを得ないとの見解を示していた。冒頭のトランプのツイッターは、これを受けて投稿したものだ。
アップルは、値上げを回避するために受託生産メーカーにコスト削減を求めるかもしれない。こうした事態に備え、台湾メーカーは関税を避けるために台湾に生産拠点を戻す可能性があるとFanは指摘する。DBS Bankによると、製造コストは台湾の方が中国よりも高いが、人件費はシンガポールや韓国の60%程度で、米国よりも大幅に安い。
しかし、アップルをカバーしているアナリストらは、台湾の受託メーカーが直ちに影響を受けることはないと見ている。「サプライチェーンのエコシステムは巨大であり、米国で代替となるサプライヤーを短期間で見つけることは困難だ」とTsaiは話す。
台湾企業に大きな打撃を与える可能性
アップルが生産を米国に移転する上では、物流面の整備にかなりの時間を要する。この間に台湾メーカーは中国から製造拠点を移転するなど、対応を図ることが可能だ。また、多くの台湾メーカーが米国に生産拠点を移すことになるかは、今後の動向次第だとFanは指摘する。
「9to5Mac」の報道によると、ペガトロンのCEO、Liao Shy-jangは昨年、アップルが追加コストを吸収するのであれば、喜んでアップル製品の部品を米国で生産すると述べたという。
しかし、他のメーカーの中には、受注の減少を受け入れる企業もあると「FocusEconomics」のChristopher Thomasは分析する。
「米国による追加関税でアップルが生産を米国に移すことになれば、アジア中のサプライヤーが打撃を受け、既存のバリューチェーンが崩壊する。高額な人件費を考慮すれば米国への移転は可能性が低いとは言え、組み立ての一部でも移転されればアップル製品の製造ハブである台湾は大きな打撃を受けるだろう」とThomasは話した。