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ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

Jonathan Weiss / Shutterstock.com

アマゾンの1人勝ちと言われてきた米国の小売業界で、去年のクリスマス商戦では消滅さえささやかれた大型小売店が、独自の努力で反撃に回ったと報じられている。いったいどんな事情があったのだろうか? 

ウォルマートは10年ぶりの増収率をマークしたし、ノードストローム(高級百貨店)やホームデポ(住宅資材)、ターゲット(ディスカウントチェーン)などの小売業も業績を伸ばしている。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、米国の景気が好調であることをその理由として挙げているが、逆に言えば、それ以外に増収の理由を説明するものがほぼ何もないということにもなる。あえて探すとすれば、自社ブランドが良かったとか、店舗改装で好印象になったなどの理由もなくもないのだが、ウォール・ストリート・ジャーナルさん、本気ですか?

アメリカの自社ブランドは飽和状態で、かつての日本の「無印良品」のようなブレイクは期待できないし、店舗改装のような「デザイン」を勝因にもってこられても、ビジネスコンサルタントとしては、うまくいかなかったときの改装はどうなるのだと反論もしたくなる。

つまり、もし好景気であるなら、本来のこれらの有名小売店が実現しうる成長率はもっと高くなるはずであり、数字から見れば、むしろ現状は低飛行で、「アマゾン対策」がまったくできていないことを思わせて、将来を憂慮してしまう。

アマゾンの返品を受け付ける奇策

とはいえ、そのなかで、唯一、本当に戦略らしい戦略で成長しているのがコールズという百貨店だ。ハワイ以外の米国全州に1200店舗を展開する百貨店だが、「百貨店」というより17の自社ブランド売りに依存する、製販直結型の小売店舗だ。

そして、コールズは、会員獲得とクーポン発行にどこよりも力を入れている。筆者の住むラスベガスでも、新聞の折り込みに毎週チラシとクーポンを挟み込んで、「割引集客」に徹底している。

しかし同社は、去年の9月から、顧客がアマゾンで買った商品の返品を受け付けるという、驚くべき奇策に出た。これは店舗数で全米一を誇り、100年の歴史を掲げ、株式も上場する百貨店にとっては、いわば屈辱的な戦略だ。

さらに、最近では、アマゾンが開発したAIアシスタントのアレクサ(アマゾンエコー)を、コールズで展示するスペースさえつくっている。競合してきた百貨店の店舗内に、大きなアマゾンの看板を見るのは異様な光景だ。

これは、とりもなおさずコールズのクーポン戦略の延長だ。新聞広告を挟む。メール配信をする。アドワーズ広告(広告主に提供するクリック課金広告サービス)で、消費者のネット閲覧中にどんどん広告を見せ、クーポンを配る。

しかしそれだけなら同業者もやっている。それ以上に割引クーポンを配るには、アマゾンの顧客にまで、自社のクーポンを掴ませるということを考えたのだ。

文=長野慶太

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