福島県郡山市のイタリア料理店「インコントラ ヒラヤマ」では、リゾットに亀の尾を使っている。
「亀の尾は出汁を吸いやすく、かつ出汁に負けない米の存在感がある。米に出汁が入るだけでなく、米から出汁に出る旨みも感じられる」と話すのは、オーナーシェフの平山真吾。あるイベントで、スペイン料理のシェフにパエリアのお米として使ってもらった際も好評だったという。
「インコントラ ヒラヤマ」の亀の尾リゾット
「米」を肴に「酒」を飲む
ところで、私は常々、「酒によって米を食べる人が減っているのではないか…」と感じている。酒の席では、ごはんは“シメ”、つまり最後になりがちで、料理と酒でお腹がいっぱいになると米を食べずに終わる、という人は多い。あるいは「太るから」と好んで食べない人もいる。
主食の多様化によって、朝はパン、昼は麺、夜はお酒で、1日に1粒も米を食べない食生活も普通になった。「日本は米の国」とか「おむすびは日本のソウルフード」と言われるが、実際の消費を見ると米はそれほど食べられていない。
旅行サイト「トリップアドバイザー」が2015年に発表した国民一人当たりの米消費量(生米)を見ると、1位はバングラディシュで1日473グラム。日本はなんと50位で、1日119グラム。コンビニおむすびに置き換えると、3個足らずという具合だ。農林水産省の発表によれば、毎年8万トンの米消費が減っている。
そこで、提案したいのが「米を肴に米(酒)を飲む」という楽しみ方だ。考えてみれば、鮨を食べるときに日本酒を飲む人は多い。
2年前に行ったトルコでは、野菜やムール貝にピラフなどを詰めた「ドルマス」やぶどうの葉でピラフを巻いた「サルマス」という米料理を食べながら、ワインやビールを楽しんでいる人たちを見た。当たり前のように米を食べながら酒を飲んでいる。「私たち日本人も米を肴に米を飲むスタイルを楽しもうじゃないか!」と思うのである。
同一品種の米と酒(米)の両方を味わうと、「日本酒は米からできている」ということを改めて強烈に意識させられる。「この味わいの米」から「この味わいの日本酒」が生まれるという醸造の不思議を体験することで、米と日本酒の味わい方が少し変わるかもしれない。
横浜市にある立ち飲み処「お酒とお米 おちょこ」では、店主の阿川美和子がおすすめの米を土鍋で炊き上げ、おむすびを提供している。米の品種は日替わりだが、亀の尾の日もある。亀の尾を使った日本酒を飲みながら、亀の尾おむすびを食べる。まずはこんなペアリングから楽しんでみてはいかがだろうか?
連載 : 台湾と日本のお米事情
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