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金融の善悪、不穏について執筆

イーロン・マスク(Photo by Ray Tamarra/GC Images)

米電気自動車(EV)メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO、47)が向こう10年間における自身の報酬体系についての斬新な計画を発表して世間を騒がせたのは、わずか半年ほど前のことだ。

次から次へと公表されるテスラに関するニュースの中で、この報酬の話題はすでに“補足”に過ぎない情報となっている。マスクは8月7日、テスラ株の非公開化を検討していることをツイッター上で公表した。

マスクは同社の株式を既存株主から、1株当たり420ドル(約4万6600円)で買い取る計画だという。すでに必要な資金は確保したというが、出資者は明らかにされていない。

従業員宛てのメールでマスクは、「…理由は、テスラの運営にとって最善の環境を作り出すということにある。公開企業は株価の急激な変動から影響を受ける。それは、テスラの株主でもある全ての従業員を大きく動揺させことにもなる」と説明している。

実施されれば過去最大の規模になるとされる自社株の買い取りと非公開化は実際のところ、どのように行われるのだろうか?税務・会計コンサルタントのロバート・ウィレンズは、「パソコン大手デルの創業者で富豪のマイケル・デルが行った同社の非公開化がモデルになり得る」と指摘する。

「マスクは従来のマネジメント・バイアウトではなく、リキャピタリゼーション(資本再構成)を検討していると考えられる」

「デルがシルバーレイク・パートナーズを巻き込んだように、マスクは恐らく、投資会社の協力を得ることになるだろう…全面的にではなくとも実質的に、テスラ株は投資会社とマスクが保有することになる。このモデルなら、うまくいくと考えられる」

一方、企業の合併・買収を専門とするボストンカレッジ・ロースクールのブライアン・クイン准教授は、デルと同じようにはいかないとの見方を示している。

「非公開化の前の時点で、マイケル・デルは自社の支配株主ではなかった。…マスクとは、出発点が大きく異なる。テスラとその取締役会との距離を保ちながら交渉を行わなければ(全体的な公平性の維持という点から)、マスクには非常に厳しい目が向けられることになる」

マスクは当面報酬ゼロに?

テスラの非公開化は、マスクの経営スタイルや同社の業績に対する外部の監視の目を緩ませることになる。だが、マスクにとっては残念なことに、自身が超高額の報酬を受け取ることはそれによって、先延ばしになりそうだ。

テスラが1月23日に公表した株主総会議案によると、マスクには同社の時価総額が1000億ドルに達した時点から12回に分けて、ストックオプションが付与される(発行済み株式の1%ずつ、報酬は完全な成果連動型となっている)。

その後は時価総額が500億ドル上昇するごとに、新たにストックオプションが与えられる。つまり、12回にわたってこの権利を得るためには、時価総額は6500億ドルにまで引き上げられなくてはならない。だが、1株420ドルで既存の株主たちから株式を買い取れば、マスクがこれらの条件を満たすためのスタートラインにつくことさえ、大幅に遠のくことになる。

フォーブス長者番付のリアルタイム・ランキングによると、8月8日の時点でのマスクの資産は、約221億ドル。その半分近くは、大半を保有する宇宙開発企業スペースXの株式だ。同社は今年4月に行った資金調達の時点で、評価額が250億ドルと算定された。資産のうち残る半分の大半は、20%を保有するテスラの株式だ。

編集=木内涼子

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