保険トラブルの種「約款づくり」もAIが救世主に?

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保険契約者と保険会社の間に結ばれる契約内容・義務・条件などが記載された文書(以下、保険約款)の校正・修正作業に、人工知能(AI)を取り入れようという動きが本格化しようとしている。

約款は契約者にとって非常に重要なものであるが、実際問題、あの辞書のような文書を隅から隅まで読み込んで、細かくチェックする几帳面な人はほぼいないはずである。保険販売員の人柄や説明を信用して、大まかに理解をしたうえで契約するユーザーが大半なのではないだろうか。一方で、細かい文書内容に四苦八苦するという事情は、約款のつくり手である保険会社にとっても大差がないそうだ。

保険関連の文書にはまず、約款や特約などの詳細をまとめた基本文書があり、一方でそれらを転用して保険契約者向けに改変された多くの派生文書がある。派生文書は基本文書をベースに人力で作成される場合がほとんどで、その際、矛盾や表記ミスなどが生じるケースが少なくないという。

結果、矛盾する内容を含んだ文書が生まれることは不可避であり、確認・修正作業に、非常に多くの労力と時間が割かれることになる。間違いが放置されてしまえば保険契約者と保険会社の間にトラブルが生まれかねないので、保険会社側としても多大なコストを払っているというワケだ。

保険に関する調査・研究また、保険情報の管理などのサービスを提供する韓国の保険開発院は、そのような約款に関する煩雑さを解決するため、「商品確認AIシステム」の構築を開始。年内に実用化する計画だ。同AIシステムには、各保険会社がつくった商品の条件および算出方法のデータが蓄積されており、新しい保険商品を開発したり、既存商品の規約を改正する際にエラーを検出することができるようになっている。

たとえばある保険商品をつくるとして、不適切なフレーズが含まれていたり、逆に含まなければならない内容が欠けている場合、また曖昧な表現が使用されているケースがあったとしよう。その際、同AIシステムが正確性や整合性をチェック。修正用のフレーズを提示してくれるという仕組みである。言い換えれば、AIが校正作業やファクトチェックを担ってくれるということになるが、この手の自然言語処理技術が発展すれば、保険分野以外の分野でも用途は多いはずである。

保険開発院は規約だけでなく、各保険会社の商品、および発生しうるリスクをデータベース化し、保険料の計算を一括で行えるAIシステムも構築しているという。こちらは、さしずめ「保険販売員AI」といったところだろうか。

契約書作成やセールスに人工知能が導入されていった時、保険業界はどう変化を遂げるのだろうか。いち消費者としては、安くて優良な保険商品が続々と登場してくることを願うばかりである。

連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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