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「誰もディスプレイスされないビジョン」というデトロイト復興の切り札は、企業のDNAを生かしたその企業らしいイノベーションを生むことと共通点があった。


「本音を引き出し、痛みを伴う対話と信頼を得る場こそが重要です」

2018年4月、デトロイトの都市再構築を手がけるキーパーソン、デトロイト市都市計画局のスティーブン・ルイスに取材した際、印象に残った言葉です。彼は建築家です。それが、デザイン思考を通して、企業ならではのDNAを生かした「その企業らしく長続きする企業体」へのリデザインを行っている私と同様の発想をしていたのに驚きました。

13年7月に財政破綻したデトロイト市は、外部から専門家を招き、都市の再構築に向けたチームを組成し、地域コミュニティの再生をはじめ、政策から都市運営まで包括的に取り組んできました。

デトロイトの再興では、アートによるミレニアル世代を中心とした白人の流入や、Shinolaに代表されるダウンタウンにおけるローカルの起業家精神によって、結果として雇用が生まれ、人口減も止まっている。スティーブンは、それは大事な要素だけれど、それが復興の本質ではないと言います。

彼が重要視していたのは、「『誰もディスプレイスされないビジョン』を掲げ、これまで存在していた分断を超えて、市民が『自分たち中心に創造していく』と認識したこと」と、その復興に至る過程で起きた心理面の変革でした。特に、デトロイト市長のマイク・ダガンが、地域コミュニティのハブである教会を訪れてタウンホール・ミーティングを開き、一方的に話をするだけでなく、質問を受ける。どれだけ長い列になろうと最後の人まで対話を続けてきた。それにより、各コミュニティが自分たちで創造していくという実感を持って復興に携わっていることこそが本質ではないかと話していました。

誰もディスプレイスしない。そしてそのビジョンに対して、本音で対話をする。人々を巻き込みながら、スピーディーに復興を進める。これは歴史を持つ企業が、その人や歴史を生かしつつ未来を描き、変わるために必要な、一人一人の感情や潜在的に持つビジョンを引き出し、受け入れ、その土台の上に事業やブランドを構築していく─という私の考え方と本質が一緒で、強く共感しました。

文=Forbes JAPAN編集部

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