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ニューヨーク在住ジャーナリスト / NYC-based Journalist

ピーター・L・シャー

2013年に財政破綻したデトロイトは現在、復興の一途をたどっている。そのけん引役となったのが、世界的金融機関のあるプロジェクトだった。


5月25日金曜日、夜8時のデトロイト・ダウンタウン。ホテルの部屋から見下ろす街には街灯とビルのネオンが光り、メモリアルデー(戦没者追悼記念日)の連休を前に、通りは車列の波で埋め尽くされていた。パーティー用ペダルカーに乗った若者らが歓声を上げ、白いオープンカーが大音量のBGMを流しながら通り過ぎる。

「ここまで変われるものなのか」──。2013年7月18日の財政破綻後、デトロイトを取材してから5年弱。街灯の4割が消え、廃屋が連なり、暗闇に包まれたダウンタウンを思い出すにつけ、その変化に驚く。同市には小売店が少ないが、16年、ダウンタウンにナイキの大型店が誕生。昨春には、米スポーツ用品メーカー、アンダーアーマーが同じ通りに出現した。

こうした復興をけん引しているのが、14年5月に始まったJPモルガン・チェース銀行の「Invested in Detroit」(デトロイト投資)プロジェクトだ。当初は5年間で1億ドルを拠出する予定だったが、3年間でその額を突破。昨年5月、投資枠が拡大され、19年までに、総額1億5000万ドルが投じられる見込みだ。

復興支援のキーワードは、「インクルーシブ(包摂的)な成長」。これまで900人の雇用を創出し、1300世帯の住宅を提供。1万5000人超がスキル向上研修やキャリア・技術教育を享受。技術支援や融資を受けた起業家は2200人を超える。

「慈善ではない」理由

「これは慈善ではない」。こう話すのは、JPモルガンの中部大西洋地域担当会長で、企業責任担当グローバル統括責任者のピーター・L・シャーだ。

クリントン政権下で米特別貿易使節に任命され、1990年代後半、来日した経験も持つシャーは、金融危機真っただ中の08年春、政策・規制問題などを担当すべく入社。11年に企業責任担当グローバル統括責任者に就任した。

シャーによると、復興により、労働人口や起業の増加、住宅市場の活況、経済成長がなされれば、銀行にもプラスだ。銀行家として復興支援を成功させることができれば、広義の意味で、経済成長を阻む問題に対処できるようになり、長期的には、株主にとってもいいことだ。

デトロイト投資プロジェクトは、ハーバード・ビジネス・スクールのケーススタディーとしても取り上げられた。4月11日、同行のジェイミー・ダイモン会長兼最高経営責任者(CEO)やシャー、デトロイト市長のマイク・ダガンはハーバードを訪れ、パネルディスカッションを行っている。

シャーいわく、大半の企業は、フィランソロピーを、慈善活動として、いいものかどうかという基準で判断する。JPモルガンも全米に多額の寄付はしていたが、それが「最も効果的な方法なのか、長期的なインパクトを与えているのか」という手ごたえがなかった。そこで、国内外で多くのコミュニティーが直面している経済問題にフォーカスすべきだと決断。より深くコミットする戦略に転換した。

文=肥田美佐子 写真=デイビット・レウィンスキー

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