こうした中、先日はグーグルがコールセンター向けボット技術「Contact Center AI」をリリースし、これまでセールスフォースやSAP、Zendeskが独占してきた市場に乗り込んだ。
Contact Center AIは自然言語処理エンジン「Dialogflow」をベースに開発されており、バーチャルアシスタントが人に代わって電話に応答する。この技術はクラウドベースのボットツールである「Google Duplex」に似ている。グーグルのサンダー・ピチャイCEOは今年5月に行ったデモで、Duplexがヘアサロンに電話して予約を取る様子を録音した音声を披露した。合成されたボットの声は時おり、人間そっくりな「えーと」などの言葉も発するなど、気味が悪いほどリアルだった。
コールセンターやカスタマーサービスを持つ企業であれば、Contact Center AIを導入することでDuplexと同じような効果が期待できる。英国の調査会社「Juniper Research」によると、チャットボットを導入したヘルスケア企業や銀行は、顧客からの問い合わせ1件当たり4分、金額換算で50セント以上を節約できているという。
スイスの保険会社「ヘルヴェティア(Helvetia)」は、ドイツのスタートアップ「Rasa」が開発したボットを導入し、顧客とテキストメッセージで会話をさせたところ、契約獲得率が飛躍的に向上したという。その効果もあり、同社は2017年に10億ドルの税引前利益を計上した。
ドイツの保険サービス大手「ミュンヘン再保険(Munich Re)」傘下の「エルゴ(Ergo)」もRasaのチャットボットをカスタマーサービス部門に導入している。Rasaの創業者Alex Weidauerによると、エルゴでは顧客問い合わせ件数の約30%をボットが対応しており、コスト削減につながっているという。
小規模なスタートアップにも好機
バーチャルアシスタント技術を開発する企業にとって朗報なのは、既に市場が活性化していることだ。大手では、IBMが「ワトソンアシスタント(Watson Assistant)」を、フェイスブックが無償サービス「wit.ai」を、マイクロソフトがAPIサービス「Luis」を、アマゾンがクラウドサービス「AWS」の一環として「Lex」を提供している。
Weidauerによると、Rasaを含む小さなスタートアップの強みは、カスタマイズしたサービスを提供できる点だという。スマートスケジューリングを手掛けるスタートアップ「Meekan」は、マイクロソフトのLuisを使っていたが、Rasaに切り替えたという。