キャリア・教育

2018.08.08 18:30

老舗「東京會舘」の社長が大切にする支配人の教え

大正11(1922)年に、国際的かつ誰でも気軽に利用できる社交場として開業した「東京會舘」。生え抜きで社長に就任した渡辺訓章氏から、入社以来大切にしている教えを聞いた。


企業様の記者発表会、創立記念パーティ、展示会など各種イベントに利用される宴会場、個人様の結婚式場、レストランなどの複合施設「東京會舘」で、2017年に社長に就任いたしました。

東京會舘は2022年の開業100周年に向け、来年1月には丸の内本舘のリニューアルオープンも控えています。新本舘のコンセプトは「NEWCLASSICS.」。伝統を守ると同時に、変革を恐れず、日本を代表するホスピタリティ施設を目指したいと考えています。

私は大学を卒業して東京會舘に入社したのですが、入社当初の忘れられない人がいます。メインダイニングを仕切っていた女性支配人で、それこそ言葉遣いから箸の上げ下げまで厳しく指導されたのですが、一度私がふてくされた態度をとったとき、こう言われたのです。

「もし、私と同じ注意を社長がしたら、それは素直に聞き入れるのよね? 誰が言うかは関係ない。何を言われているかが大事で、あなたはそれを曇りなき眼で理解しなければいけない」

「三つ子の魂百まで」とはよく言ったもので、35年経ったいまでもその精神はしっかりと身についています。

「いずれ、この会社の社長になる」という意識はありませんでした。ただ12年前、メガバンクの専務まで務めた方が新社長となったとき、「次期社長はプロパーにする」と宣言されまして。そのときは誰も本気にしていませんでしたが、社長のお眼鏡にかなった数人がやがて役員に抜擢され、自分も「いつ社長になってもよい状態」まで準備するようになりました。

会社の未来のビジョンを描くもよし、眼の前のプロジェクトを想定以上の出来まで仕上げるもよし。そういった経験は、たとえ将来社長になれなくても、会社を支える幹部として力を発揮できる素地になる、と思います。実際に社長になってみての感想ですか? 意外にプレッシャーよりもワクワク感のほうが大きいですね。

必要なのは、第一に健康な身体と体力。第二に平常心を忘れないこと。第三に、時には「明日できることは明日でいいじゃないか」と思える寛容さでしょうか。
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構成=堀 香織 写真=yOU(河崎夕子)

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